SaaSで企業に必要なアプリケーション全て取り揃えているのはOracleだけ
クラウド上のアプリケーションを購入し利用する際には、たんにアプリケーションだけを買うのではなく、その下にあるプラットフォームについても考える必要がある。これは、現状ではSaaSのアプリケーションだけで、企業のITシステム全てがまかなえる状況にはないため。結局は既存のアプリケーションと接続することもあれば、他のクラウドサービスと連携する必要もあるかもしれない。
その際に、Oracleのクラウドサービスは、全て業界で標準の技術を使ってプラットフォームが構築されているメリットは大きいと言う。
「世の中でもっともポピュラーな開発言語はJava。もっともポピュラーなミドルウェアはFusion Middleware、そしてもっともポピュラーなデータベースはもちろんOracle Databaseだ。Oracleは、クラウドのサービスも、これらまったく同じものを使って構築している」と言い、「クラウドの上でSaaSを利用する際にも、インフラを選ぶべきことを忘れないで欲しい」(エリソン氏)
もう1つ彼が解説したのは、今回新たなクラウドのサービスとして発表した(開発意向を示した)、Social Relationship Management Suite。Suiteとなってはいるが、これはじつはプラットフォームだとのこと。つまり、ソーシャルメディアのアプリケーション群をたんに集めて提供するだけでなく、ソーシャルのアプリケーション群がSaaSのプラットフォームと一体化しており、ソーシャル機能がプラットフォームになっていると言うこと。「テクノロジープラットフォームとなっているところが、たんなるスイート製品とは違うところだ」とエリソン氏。エンタープライズ用途の社内SNSはもちろん、ソーシャルのデータをOracleのSaaSのサービスに対し横串で貫くように連携でき、各種アプリケーションからソーシャルに情報を発信するなどの機能を提供することになる。
このSocial Relationship Management Suiteについては、午前中に行われた製品開発担当 エグゼクティブ・バイスプレジデントのトーマス・クリアン氏のキーのとセッションの中でも触れられていた。「Oracleのソーシャルマーケティングの機能を利用すれば、facebookと容易に連携でき、情報をすぐにfacebookに発信できる。逆に、facebookで誰かが「Like」ボタンを押したならば、その情報をもとにすぐにマーケティング活動を開始するといったことが可能だ」と説明していた。
そして、「なぜOracleがソーシャルに注力するかと言うと、ソーシャルメディアがビジネスプロセスのやり方を変えるから」だクリアン氏。だからこそ、単機能ではなくビジネスプロセスを効率化する他のアプリケーションとも連携できる、プラットフォームの形でソーシャルの機能を提供することになったのだろう。
SaaSのサービスであってもプラットフォームが重要
昨年正式にリリースされた、次世代のアプリケーション製品で全てがクラウド対応しているFusion Applicationsは、すでに世界で400社以上に採用されいるとのこと。内訳を見るとCRMが3割強、HCMも同様、残りがERPとなっている。そして利用形態としては、SaaSでの利用が65%でオンプレミスが26%、残りの9%が第三の選択肢であるOn Demand、つまりは顧客やOracleのデータセンターにシステムを置き、管理はOracleの専門家が行うというサービス形式での提供だ。この3つの形態を自由に選べるメリットが、Fusion Applicationsのメリットでもある。
実際、ハンバーガーレストランチェーンのRed Robinでは、OracleのデータセンターでOracleが管理するOn Demand形式でFusion Applicationsを導入した。そして、十分に効果が実感できたあとは、オンプレミスに移行したとのこと。どの形態でも、同じものなので3つのどこからどこへでも容易に移行できる。これができるのはOracleだけだとのこと。「Salesforce.comのSaaSを使っても良いけれど、同じものをインハウスでは利用できないし、そもそもそういうモデルは用意されていない」とエリソン氏。規制の厳しいビジネスを行っているような企業では、当初はパブリッククラウドで初めて、次のステップからはファイヤーウォールの内側となるPrivate Cloudに移行するところもある。Salesforce.comでは、このようにファイヤーウォールの内側で運用することはできない。
そして、「20年間この業界で学んできたことを忘れるべきではない。そのために、パブリッククラウドでも全て標準のテクノロジーを使っている」とエリソン氏は言う。クラウドになったからと言って、技術的に何もしなくていいというわけではない。これまでクラウドの外でやっていたことが、クラウドの中でもキチンとできるようになったというだけとのこと。
セッションの最後にエリソン氏は、ソーシャルメディアのつぶやきを分析し、シンプルな疑問に対して大量のデータをさまざまな角度から分析し、正確な答えを導き出して判断するデモンストレーションを行った。ソーシャルメディアのつぶやき、たとえばTwitterであれば通常は140文字までのテキストの分析を頭に浮かべる。しかし得られるデータはそれだけではない。どこでつぶやかれたのかという位置情報。どの端末か、そしていつつぶやかれたかといった時間も取得できる。これらと、自社が持っている構造化データを組み合わせて分析できることが重要であり、さらにはそれをリアルタイム分析できるコンピュータパワーも必要となる。
Oracle以外のベンダーも、デモンストレーションなどで見せるソーシャルメディア由来のビッグデータ活用のシナリオは、似たような世界を実現しているものが多い。異論もあるかもしれないが、最新のソーシャルメディア管理アプリケーションで実現できることは、大差がないということなのだろう。Oracleはそのソーシャルメディア管理のアプリケーションに加え、それを動かすプラットフォームが重要だと主張する。これが標準技術で作られているからさまざまな外部クラウドサービスや既存システムと容易に連携できる。そして、プラットフォームが強靱で高性能だからこそ、企業が要求するリアルタイム性に応えられると言うのだ。
現状は、ソーシャルメディアをどうビジネスに活かすかという段階であり、ユーザーはいったい何ができるかを主に気にすればいい時期かもしれない。しかし、今後それを使うのが当たり前になり、継続して効果を出し続けていくことになれば、たしかにアプリケーションを動かすプラットフォームの強靱さは気になるところ。誰でもすぐに簡単に使えるクラウドと言えども、そのプラットフォームには注意すべき、というOracleの主張はたしかにその通りだなと思う時代がすぐにでもやってきそうだ。