マス・イノベーションの時代の到来
2025年をターゲットにした「働き方の未来」が描かれ話題になった書、『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著)の第5章「コ・クリエーションの未来」では、ブラジルのリオデジャネイロで暮らすミゲルという青年が、インド北部の都市ラクナウの交通渋滞の問題を解決するために、世界中に散らばった仲間と「テレビ会議」や「ホログラム(立体映像)」などのオンラインツールを用いながら、マス・イノベーションのための活動を展開するシナリオが描かれています。
著者のリンダ・グラットンは「2025年の世界では、インターネットなどのテクノロジーの力により、イノベーションと創造が「マス(大量)」型の活動に変わる。大勢の人がそのプロセスに参加するようになるのだ」と書いていますが、その徴候としてのプラットフォームはすでに実際に登場しています。
たとえば、デザイン思考のアプローチで様々なイノベーションの実現を支援しているIDEOが提供する「OpenIDEO」もその1つといえるでしょう。
OpenIDEOは登録したユーザー同士が様々な社会課題の解決のためのアイデアを共有するマス・イノベーションのためのプラットフォームです。
ユーザーは、スポンサーが提示した「CHALLENGES」と呼ばれるプロジェクトに対して、アイデアを出し合います。アイデアを発散する「Inspiration」、投稿された複数のアイデアを元に具体的な案にまとめていく「Concepting」や「Applause」、さらに案をブラッシュアップして絞り込んでいく「Refinement」、各案を評価し合う「Evaluation」という5つの段階を経ながら、具体的な解決策を探っていくしくみになっています。
現在、リアルな場においては、フューチャーセンターのように様々な人びとがオープンに集い、対話を通じて未来を創造していくマス・イノベーションの場での活動が活発になっています。今後はそうした活動をさらに時間や場所に縛られない形でオープンにし、世界の様々な地域の問題解決を、様々な地域に住む人たちの知恵を結集することにより、イノベーションを実現していくことが強く求められてくるはずです。
そのときには、OpenIDEOをさらに発展させて、参加しやすくなったオンラインのコ・クリエーションのプラットフォームが必要とされるのではないでしょうか。