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Oracleラリー・エリソンCEOがネットワーク越しに降臨、 クラウドの時代にはSAPやIBMはもはや敵じゃない


Oracleのクラウド戦略を発信するワールドワイドのイベントツアー「Oracle CloudWorld」が、4月9日に東京六本木で開催された。今回の事前参加登録者数は4,900名を超え、Oracleの開催してきた国内のワンデイイベントとしては、最大規模に。まだまだ、世の中のクラウドコンピューティングへの関心は高いようだ。

Salesforce.comやAmazon Web Servicesという新たなライバルが生まれた

サテライトで登場のラリー・エリソン氏
サテライトで登場、ラリー・エリソン氏

多くの参加者を呼び寄せた理由の1つが、基調講演に登場した、ご存じラリー・エリソンCEOだろう。とはいえ、残念ながら米国サンフランシスコからネットワーク越しでのサテライト参戦だった。エリソン氏の話の大部分は、昨年9月に米国サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorldのときと同じ内容だった。アップデートが少なくて残念とも言えるが、一貫して同じ方針でクラウドコンピューティング戦略を貫いている証しだとも言える。

 そんな中、エリソン氏が強調していたのは、クラウドは水道やガスのようなユーティリティサービスのようになるということ。そして、モバイル端末やPCブラウザさえあれば、すぐに利用できること。「コンピュータの複雑性は隠蔽される。そしてアップグレードもサービスプロバイダーにより実施され、利用者は何らかそういったことに煩わされることはない」と言う。サービスを提供するためのインフラへの投資は、当然ながらプロバイダーが行い顧客は必要なぶんを従量課金で支払うだけでいい。

 ここまでのITの変化は、どのクラウドサービスでも同様のものだろう。Oracleのクラウドサービスがそれらと異なるのは、「完全な包括的なコンピューティングサービスを提供できることだ」とエリソン氏。これは、インフラサービスのIaaS、プラットフォームサービスのPaaS、そしてアプリケーションを提供するSaaSという3つすべてを提供しているプロバイダーは、Oracleしかいないということだ。

 Salesforce.comにはSaaSとPaaSがあるが、SFAやCRMなどの一部のアプリケーションしかSaaSでは提供していない。ビジネスに必要なアプリケーションすべてを揃えていない。またPaaSは業界標準ではなく独自仕様のものだと言う。対してOracleはすでに100以上のアプリケーションをSaaSで提供しており、必要なものがすべて揃っている。そして、そのアプリケーションはOracleのデータセンターだけでなく、顧客のデータセンターにも置くことができる。つまりは「顧客は自由に選択できる」と主張する。

 また、OracleのPaaSはデータベースも開発言語も、さらにはミドルウェアも業界標準のものだと。このことも動かす環境の自由な選択につながる。そして、高性能で信頼性の高いIaaSも提供している。これらクラウドサービスは、Exadata、Exalogic、SuperClusterといった同社のフラグシップのプラットフォームで動いている。顧客は最高の性能を選ぶこともできるし、高濃度に集約されているのでコスト効率の高い安価なサービスも選べる。

万一障害が発生しても15分で何とかする、ここまで保証しているところは他にはない

 クラウドの時代になり、たとえばアプリケーションを提供するSaaSでは、オンプレミスで競合だったSAPではなくSalesforce.comが競合になる。また、インフラのサービスはIBMでなく、Amazon Web Services、あるいはRackspaceのような会社がライバルになる。「クラウドの時代になって、新しい競合が生まれた」とエリソン氏。

 そして、クラウドで重要となるマルチテナント性の確保の部分も、Oracleの大きな特長だ。Salesforce.comのようにアプリケーションのレベル分離するのではなく、データベースのレベルで完全に分離している。なのでデータが混在することは決してありえない。さらに、完全なマルチテナント性が提供できているので、サービスプロバイダーの都合で一斉にアップグレードするのではなく、自社の都合でアップグレードのタイミングを選択できる。

 さらに、クラウドだけでは済まないので、クラウドからアプリケーションを買えば他のアプリケーションと統合することになる。そのためには相互接続する能力が必要であり、それにはSOAで提供している。また、既存のアプリケーションに帳票の機能を付け加えたい際にも、アプリケーションと同じプラットフォームのPaaSがあるので、簡単にかつ自由に連携、拡張が可能だ。

 もう1つ興味深い点としてエリソン氏が指摘するのが、これらコスト効率のいいパブリッククラウドの仕組みを、自社のデータセンターでも運用できること。逆に自社のデータセンターにあるアプリケーションやカスタムアプリケーションをパブリッククラウドに簡単に持って行くこともできる。「その際にも、基本的には一行足りともアプリケーションのコードを変える必要はない」とエリソン氏。

 そして、同社がプライベートクラウドと呼んでいるものもあり、こちらは顧客のデータセンター中で、Oracleがクラウドサービスを提供するもの。プラットフォームやソフトウェア、アプリケーションはOracleが購入し、顧客のデータセンターのファイヤーウォール内にクラウドシステムをOracleが構築する。顧客は、データを持ち出せないなどの規約や制約がある場合にも、これなら安心して自社のファイヤーウォール内でクラウドのサービスを使える。こうやって使うのは一部だけでもよく、顧客はパブリックと組み合わせてさまざまな選択ができる。「これができるのは、Oracleだけだ」とエリソン氏は強く主張する。

 Oracleのクラウドサービスのもう1つの売りが、高信頼性。冗長性が確保されており、基本的には止まらないサービスだ。なので、顧客は止まることを意識する必要はない。「仮に何らか障害が起こっても、15分で何とかする。このレベルで保証しているサービスは他にはない」とエリソン氏。性能面でも信頼性の面でも十分な自信を持っているということだ。

Oracle Database 12cは5月初旬までには出荷開始

 このクラウドを支えているのがソフトウェアの技術であり、中でもデータベースは他社よりももっとも優れていると言う。そして、さらに日々改善しているのだと。いまでは、構造化、非構造化のデータも扱えるデータベースもあり、常にデータベースの近代化に努めている。そして、昨年発表した最新版データベースのOracle Database 12cは、向こう1ヶ月以内に出荷を開始すると断言した。

 この12c、何が違うのか。もっとも大きな違いは、複数のデータベースを1つのデータベースの中に実装できるところ。これにより、従来はアプリケーションごとにデータベースを入れ、メモリもCPUも個別に割り当てていた。それが、Oracleの新しいマルチテナント・データベースでは、1つの共有メモリを複数のデータベースで共有できる。さらに、プラグインの形でデータベースを簡単に増やしたり減らしたりもでき、プロセスも共有できる。これらにより、よりシンプルでリソース効率のいい環境ができあがる。

 そして、この新たな仕組みを利用する際にも、顧客のアプリケーションには手を入れる必要はない。実際に12cを使ってデータベースの集約をすれば、ハードウェアは従来の1/6で済むとのデータが示された。さらに、集約することで運用コストは大きく下がる。さらに重要なのは「データが遙かに安全だということ、しかもコストも安価」とエリソン氏。

 このOracle Database 12cは、当初の予定より若干遅れての出荷開始となる。そのぶん、しっかりと作り込まれての市場投入となるはず。というわけで、実際の市場での評価がどうなるのか、大いに気になるところだ。データベースエンジニアの方々は、エリソン氏の自信のほどをその手で、その目で実際に確かめてみて欲しい。そして、DB Onlineにも、是非ともそのリアルな評価の声を伝えてくれればと思うところだ。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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