通常の損益計算書と変動損益計算書の相違点
変動損益計算書は、通常の損益計算書で集計される売上原価、販売費一般管理費を変動費、固定費に分類し、再集計して営業利益を求める管理会計で使われる損益計算書です。
両者の大きな違いは、「粗利益の考え方」にあります。通常の損益計算書は、「売上高-売上原価」によって、「売上総利益」という粗利益を算出します。変動損益計算書では、「売上高-変動費」という計算によって、「限界利益」という粗利益を算出します。すなわち売上原価と変動費の違いが、売上総利益と限界利益の違いに影響します
売上総利益は、制度会計(法律で規制される会計制度)で使われてきた代表的な粗利益の考え方です。しかし事業計画では、条件を変更しながら利益水準、売上水準などを推計する必要があります。このようなシミュレーションを行う場面では、変動損益計算書が有効です。この点は、セルフ式うどん店の事例を考えていただければ、理解できるはずです。
「売上総利益」と「限界利益」の違いを理解しよう
売上総利益と限界利益で大きな違いがでるのは、売上原価の中に変動費と固定費が含まれている会社です。製造業がその典型です。図2をご覧ください。
製造業は工場部門で発生した費用を集計して、製品原価を計算します。これが原価計算です。製品原価は、材料費、労務費、経費の原価の3要素に分けることができます。外注加工費のウェートが高まっているので、経費は、外注加工費、その他の経費に分類して考えましょう。
材料費、外注加工費は、製品の製造・販売と比例して発生する変動費(比例費といういい方をする場合もある)です。製造・販売がストップすれば発生しないことから、変動費であることがわかります。労務費とその他の経費は固定費です。変動費は、販売費一般管理費にも含まれています。その典型的な変動費は、発送配達費です。製造した製品を、販売するまでの過程で発生するためです。販売をストップすれば、発生しません。
これらの変動費を控除した限界利益と売上総利益を比較してみてください。TKC経営指標で見ると、平均的な黒字の製造業では売上総利益率(=売上総利益÷売上高)は20%程度ですが、限界利益率(=限界利益÷売上高)は40%程度と倍の大きさとなっています。