
ビジネススピードという言葉はさまざまな意味で使われているように感じます。システム開発をしている企業なら、開発スピードを上げることかもしれませんし、小売業なら商品の回転速度かもしれません。いろいろなビジネススピードがありそうですが、それらのスピードを上げたら、どんな影響がお金に出てくるのでしょうか。
ビジネススピードは業種・業態によって違う
はじめのリード文にもあるとおり、業種・業態によってビジネススピードの意味が違う可能性があります。いくつかビジネススピードの意味を考えてみましょう。スピードですから、いわゆる「速度」です。速度がつくものを業種・業態ごとに考えてみましょう。
- 流通業→商品回転速度
- 飲食業→席の回転速度
- 製造業→生産速度
- 印刷業→印刷機の速度
- システム開発業→開発速度
いくつかの業種を挙げてみました。皆さんがお勤めの業種業態では、ビジネスのスピードを表すものは何ですか?ぜひ、考えてみてください。
さて、すでにお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、実は上の二つと下の三つは少し違うことを示しています。上の二つは速度が上がると――つまり、数値が良くなると――売上が向上します。
たとえば、商品回転速度(回転率とも言います)が上がれば、それだけ商品が売れていることになりますから、通常は売上が向上します(在庫を削減すると、回転速度が上がったように見えるのですが、ここでは商品がうまく回っていると仮定します)。同じように、飲食店も空いた席に次々とお客様が座れば、売上が上がることになります(席数を減らせば、席の回転速度は上がったように見えますが、ここでは席数は一定と考えます )。

一方、下の三つは違います。たとえば、印刷業で印刷機を買い換え、印刷速度が上がったとしましょう。しかし、注文がその速度の差以上に取れない限りは売上は上がりません。
製造業も同じですし、システム開発業も開発速度が上がったからと言っても、注文がなければ「生産性が向上」しただけで、売上は直接的には上がりません。もちろん、売上が上がる可能性が高まることは間違いありません。なぜなら、それだけの量をこなせるような生産性になったということですから。
つまり、ビジネススピードの定義をどのようにするかによって、お金への影響は変わってくるということになります。以下、ここでは概念として「ビジネススピード=売上の速度(に近いもの)」と定義しておきます。最初の囲みの上の方ということですね。
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- この記事の著者
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佐川 博樹(サガワ ヒロキ)
中小企業診断士。大手電機メーカの生産管理システム企画構築、関連会社のシステムコンサルティング、メディア企業向けセールスエンジニアを経て独立。現在は、中小零細企業向けのシステム導入コンサルティング、ネット活用、各種経営支援を行っている。中小企業診断協会 東京支部 城南支会 常任理事、NPO法人東京城南中小企業診断士会 常任理事。
・著者のホームページ※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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