フラッシュ(SSD)のメリットというとまず思い浮かぶのはパフォーマンス向上だ。しかしEMCジャパン 内田氏は「ドライブ数(設置場所の小ささ)や電力消費量の削減など、コスト削減もあります」とメリットは多岐にわたると話す。
2016年はHDDとフラッシュの価格が逆転する
EMC World 2016でEMCは大々的に「2016 The year of all flash for primary storage(2016年はオールフラッシュ元年)」と掲げた。2016年はプライマリストレージでもオールフラッシュが主流になると見ている。つまりストレージの主流がHDDからフラッシュへシフトするということだ。
理由はコストだ。これまで容量当たりの単価で見るとフラッシュのほうがまだ高かった。だからユーザーは安いほうのHDDを選んでいた。しかし近年フラッシュの価格下落はHDDよりも早く、2016年には容量当たりの価格はフラッシュのほうがHDDより安価になると見られている。
内田氏は「性能がいいだけではなく、設置スペースを小さくでき、消費電力も少なく、故障率も低い。これで価格がHDDよりも下回るとなれば、もうフラッシュを利用しない理由はありません。これからはそんな時代になります」と話す。
製品ポートフォリオは続々とオールフラッシュに対応
あらためて内田氏はEMCのフラッシュ製品ポートフォリオを示した。大きく分けて3つのカテゴリがある。ラックスケールフラッシュ、ハイエンドのオールフラッシュアレイ、ミッドレンジのオールフラッシュアレイ。
ラックスケールフラッシュに該当するのが2016年3月に発表された「DSSD D5」。平均100マイクロ秒の低レイテンシ、100 GB/sの高スループット、最大1000万IOPSで超高速の性能を誇る。オールフラッシュアレイと比較すると応答速度は10倍、秒間IOも10倍で内田氏は「100倍優れています」と胸を張る。現在はこの性能を強みに気象の分析やがんの研究などで活用されている。またDSSDは今年後半にはデュアルラック構成で容量もIOPSも倍となる製品をリリースする予定だ。
ハイエンドのオールフラッシュに該当するのはXtremIOやVMAX。XtremIOは近年急進している製品で、特徴はスケールアウト型。主要な機能にインラインの圧縮と重複排除、超効率スナップショット、ディスク暗号化、データ保護、レプリケーションなどがある。
VMAXは2016年3月に「VMAXオールフラッシュ」が発表されたところ。長い実績のあるVMAXにオールフラッシュ版が登場したことになる。7.68TBと15.36TBのSSDに対応する。ネイティブインライン圧縮を実現し、VVOLSに対応、リモートレプリケーション、暗号化、スナップショット、インラインのマイグレーションなどの機能を持つ。
ミッドレンジのフラッシュ製品には「EMC Unity(以下、Unity)」がある。2016年5月18日から提供開始している。今回の目玉となるので詳しくは後回しにしよう。オールフラッシュとハイブリッドなどがあり、安価でフラッシュが身近になりそうだ。
もうひとつ、オールフラッシュ製品では「プロジェクト Nitro(ナイトロ)」がある。正式リリースは2017年とまだ先ではあるものの、2016年後半にはベータプログラムが開始される予定だ。オールフラッシュアレイを積んだIsilonの新製品となる。メディアエンターテイメントやEDAなど性能や容量を必要とするアプリケーションでの活用が想定されている。
ミッドレンジのオールフラッシュ「Unity」とは?
さてここからは注目のミッドレンジのフラッシュ製品Unityを見ていこう。日本でも5月18日から出荷開始となった。ミッドレンジの既存製品VNXと比較するとUnityはシンプルかつコンパクトに設計されている。
Unityなら最小構成は2Uのエンクロージャーでディスクは25本。VNXだと最小構成でも7Uなので、UnityはVNXと比較してラックスペースは1/3、コストは半分、それでいて3倍の性能を持つ(VNX5800とUnity 600Fを比較した場合)。
Unityは提供形態が多岐にわたるのも特徴だ。ミッドレンジユニファイドストレージとしてのUnityはオールフラッシュとハイブリッド(SASやNL-SASとのハイブリッド)モデルがあるほかに、ソフトウェア版の「Unity VSA」や、コンバージドインフラストラクチャ製品「VBlock」に組み込まれて提供される。
ユニファイドストレージのソフトウェアとなる「Unity VSA」はESXiサーバーにインストールして使う。無償版と有償版があり、機能は同じで有償版はEMCのフルサポートがつく。有償版なら最大50TBまで利用可能。
対応しているプロトコルもNAS、SAN、VVOLSと多岐にわたる。コンバージドインフラストラクチャ製品なら高い性能を必要とするトランザクション処理、ソフトウェア版ならファイル共有などワークロードに合わせて製品を選べるようになっている。
画期的なのが価格だ。フラッシュ製品は高価格というイメージがあるなか、ユニファイドストレージでオールフラッシュなら200万円程度から、ハイブリッドなら100万円台から提供される。内田氏は「これまでよりも低コストでオールフラッシュが使えます」と強調する。
EMCでは「XPECT MORE」というプログラムも提供している。これはXtremIOなどで提供済みのプログラムをUnityにも適用するもので、保守費の固定化、3年間の返金保障、故障前の部品交換(稼働状況を監視して故障を予期して事前に交換)からなるプログラムだ。
ブラウザベースの「Unisphere」で運用管理をシンプルに
次に特徴を整理していこう。主な特徴は4つ。シンプル、柔軟性、最新のチップセット、手ごろな価格が挙げられる。
シンプルさは運用のシンプルさだ。運用管理はブラウザからアクセスできるUnispereがメインとなる。ダッシュボードから稼働状況が確認できる。また稼働状況のデータをEMCのクラウド(CloudIQ)に送信すると、性能や容量の傾向を確認することが可能だ。ヘルススコアを確認することでプロアクティブな監視でき、安定稼働ができる。
柔軟性は対応の幅広さとも言えよう。先述したように、コンバージドインフラストラクチャ製品、オールフラッシュにハイブリッド、物理環境と仮想環境、対応プロトコルの広さなどが挙げられる。どんな用途でも対応可能ということだ。
最新のチップセットとして、Intelの最新プロセッサを搭載してミッドレンジといえども高性能を実現している。
価格も先述したようにオールフラッシュなら200万円程度、ハイブリッドなら100万円台からという手ごろな価格となっている。最安で1GBあたり1ドル未満、ここまでフラッシュは手ごろな価格になった。
ここで内田氏はUnisphereのデモを披露した。ダッシュボードは稼働状況が直感的に分かるような表示となっている。故障やエラーが生じていれば赤や黄色で表示されるなど見た目にも分かりやすい。さらにその場で交換部品を発注することも可能だ。スループットなど性能状態も確認できる。またVNXと異なり、データの履歴を最大90日まで残せるのも特徴だ。
ミッドレンジということで高度なスキルを持つエンジニアでなくても運用できるようにと配慮もある。Unisphereからマニュアルをダウンロードしたり、動画(YouTube)による解説もある。
最後に内田氏はこう話した。「EMCのフラッシュ製品は1つではなく、DSSDからXtremIOやVMAXにミッドレンジのUnityまで幅広く提供しており、様々なニーズやワークロードに最適なものを選ぶことができます。ぜひEMCの最新フラッシュ製品でデータセンターの最新鋭化に役立ててください」