内部統制をきっかけとしたERP導入
最近のERP導入理由のひとつに、来年から施行される内部統制対応(J-SOX法)があります。これは米国SOX法対応と同様に、日本でも適正な財務報告を企業に求めるために導入されるものです。米国ではERPの普及率が7割以上と言われていますが、そのきっかけのひとつはこの内部統制対応だと言われています。
実際には、米国では大手上場企業(時価総額で判断)に対象を絞って先行対応を求めており、中堅中小企業への適用は先送りしています。しかし、日本の上場企業はその規模に関係なく対象となることもあり、多くの企業がその対応に追われている状況です。
日本には約4,000社の上場企業があり、うち東証1部上場企業は約1,700社です。しかし、実際には、親会社に対応して子会社にも内部統制対応が求められるため、約5万社が対象となります。そして、この機会に子会社にもERPを導入するというケースが増えているのです。
このような状況を背景として、子会社にERPを導入する場合に「親会社と同じERPパッケージを採用すべきか」「どのようにERPパッケージを導入し運用すべきなのか」という課題が持ち上がっています。
子会社のERPパッケージ選定は、親会社と同じが良いのか
大抵の企業グループでは、親会社が採用しているERPパッケージを、子会社にも導入することをまず検討するようです。財務処理を行う上で同じERPパッケージを採用した方が親会社と子会社のシステム間で連携性が良く、効率的であるというメリットがあります。
また、同じERPパッケージをグループで幅広く採用しますから、契約するライセンス数も多くなり、ボリュームディスカウントで割安となるというメリットもあります。グループ内で同じシステムを利用するためノウハウも共有化でき、経理財務システムや人事管理システムなどをグループ内で共有化して、シェアードサービスにするケースもあります。
一方で、親会社が定めたルールに沿っていれば、同じERPパッケージでなくても構わないという考え方もあります。例えば、親会社が製造業、子会社が販売会社、物流会社、サービス業などのように両社が異なる業態である場合、無理に同じERPパッケージを適用すると、業務との適合性が悪くなり、生産効率が低下する可能性があるからです。業務プロセスや業態が違えば、求められる機能要件や負担可能なコスト、システムの活用レベルなども変わるため、その判断は子会社の自主性に任せるという考え方です。