既定路線とは言え驚きの買収劇
創業当初は頻繁にエリソン氏から連絡があり、経営状況がどうかを訊ねられたとか。最近は節目ごとにネルソン氏のほうから経営状況の報告をするようになり、その際にエリソン氏から積極的なアドバイスをもらっていたという。そのような関係性を考慮すれば、この買収の動きそのものは予測の範囲と言えるだろう。とはいえ、このタイミングでこの金額とは、やはりかなりの驚きもある。
2016年5月に開催されたNetSuiteの年次カンファレンスイベント「SuiteWorld 16」でも、ネルソン氏はビジネスが極めて好調に推移していることをアピールしていた。日本のSaaSベンダーとしての認知度は今ひとつという状況ではあるが、海外では新たにビジネスを興して成長するような企業では、NetSuiteのERPを選ぶのが「デフォルト」だともいう。最初にNetSiteを選んだ会社が大きくなってもNetSuiteを使い続けているということだった。
さらに最近はこれまでNetSuiteが主なターゲットとしてきた、スタートアップ企業や中堅、中小規模の企業だけでなく、大企業でも採用が進んでいる。本社ではOracleのERPパッケージを導入しいるような大手企業でも、海外ブランチ組織などでNetSuiteを活用している事例は数多くあり、こういった利用のタイプではOracleとNetSuiteは補完関係にあるとも言う。今回の買収も、両社のクラウドERPのソリューションは補完関係にあることが強調されていた。
買収が完了すれば、なんらか両社のサービスは統合化することになるだろう。とはいえ、完全に基盤を共通化して、OracleのERPであるOracle Fusion ApplicationsとNetSuite OneWorldが1つになることはないと予測している。そこまでやるとなれば、基本的なアーキテクチャを変更するような大きな変更となる。既存顧客も多いNetSuiteのサービスに対し、そのような急激な変更をすれば顧客が離れかねないだろう。
またSaaSベンダーのNetSuiteだが、強みはプラットフォームにあると主張していたのは現在は会長でCTOのゴールドバーグ氏だ。このプラットフォームのところはNetSuiteが独自に提供しているものであり、それがSaaSでありながら簡単にカスタマイズできるところになっている。このあたりのNetSuite独自の機能部分を統合するのはそう簡単ではないだろう。