ITInitiativeの同タイトルの記事を3回に分けて掲載いたします。
はじめに
阪神・淡路大震災が発生したのは、1995年(平成7年)1月17日火曜日、発生からすでに13年もの月日が経過した。この大災害で、じつに6400名を超える多くの尊い命が失われ、長期間に渡りさまざまな社会インフラサービスが停止し、その復旧には長い時間と多大な労力を要した。
この大災害を経験した多くの企業は、その後はさまざまな対策を施し災害に強い企業になるべく努力を続けている。災害を直接経験してはいなくとも、不測の事態に適切に対応し事業を継続できる体質を持つことは、いまやどの企業にとっても必須と認識されている。
不測の事態は地震などの災害だけではない。人為的なミスによる事故もあれば、機械やシステムの障害もある。いまのところ日本ではあまり実感はないかもしれないが、テロの驚異もある。
事業継続はすべての企業が真剣に取り組むべき重要な課題ではあるが、どういった方法でどこまで対策を施せばいいかは不透明だ。ここまでやればよいという基準は、業種や業態、企業の規模などによっても大きく異なるだろう。
また、事業継続計画の必要性は認識していても、まだほとんど対策を施せていないという企業も多い。一方、金融機関をはじめ、すでに積極的に事業継続計画に取り組んでいる企業もある。
現状、企業はどのように事業継続計画に取り組んでいるのだろうか。
ITシステムは、いまや企業のビジネスと密接に関連している。ITシステムが止まれば、ビジネスが止まってしまう企業も増えている。今回は、いくつかの企業に、事業継続の対策、とくにITシステム関連の実際の対策状況について話を聞いた。
完全で壊れないシステムを求めない
新生銀行が事業を開始したのは、2000年3月、翌年6月にはパワーフレックスという総合口座を通じて新たなリテールサービスを開始する。このときから、店舗、ATM、インターネット、コールセンターと複数のチャネルを通じた、新たな銀行サービスの提供が始まったのだ。
開業から本格的なリテールサービス提供開始まで、与えられた時間はほんの1年あまり。この極めて短い期間で、24時間休むことのない銀行サービスを実現する、新たなITシステムを用意しなければならなかった。
国内において、当時は既存銀行のほとんどがメインフレームを用いITシステムを自前で構築するのが当たり前だった。ところが海外に目を向けると、銀行業務のシステムを構築するのに既存のパッケージ製品を活用している例も多い。
システムを独自に設計し、それを一から構築して完璧に動くようテストを行う。これには、莫大な手間と時間が必要だ。新生銀行が1年という短期間でシステムを作り上げるには、海外の成功例を参考にパッケージ製品を活用するのが最善の選択だった。
このとき選んだプラットフォーム環境は、MicrosoftのWindowsだ。ネットワークについても、専用線を用いるのではなくオープンなインターネットの活用を選択している。
「たとえば仮にIBMのOSを選べば、IBMのハードウェアを使うことになるでしょう。Windowsを採用することで、そういったしがらみをできるだけ排除したかったのです。早く、安価にシステムを完成させるためには、Windowsベースの環境でパッケージ製品を使い、公共のインターネットを活用する必要がありました」と語るのは新生銀行執行役システム企画部長の佐藤芳和氏。
Windows環境から始まった同社のITシステムには、現在もメインフレームは一切ないという。新生銀行は、短期間でシステムを構築するために既存のパッケージ製品を採用したが、このことが事業継続という目的にも大きく貢献することになる。