2016年10月24日、米国ラスベガスで「IBM World of Watson 2016」が開幕した。このイベント、昨年までは「IBM Insight」と呼ばれていたもの。アナリティクスのツールやそのインフラであるデータベースなどの話題が中心となっていた。昨年くらいからコグニティブ関連、つまりはWatsonの話題がぐっと増えており、今年は名実ともにWatsonのイベントとなったようだ。この名称になった背景にはIBMの製品、サービスのブランディング変更も関係しているかもしれない。IBMでは製品、サービスのブランドを、コグニティブ関連の「Watson」とクラウドの「Bluemix」という2つに収れんしているのだ。
5年後にはあらゆる医療関係の職業でWatsonを使いたいと思っている
World of Watsonのカンファレンス自体は今回が2回目だと語るのは、IBM Cognitive Solution and Researchのシニア・バイスプレジデントで、自らをWatsonのゴッド・ファザーだと称するジョン・ケリー氏だ。1回目はブルックリンで開催し、1,000名ほどの規模の会議だった。それが今回のWorld of Watsonでは、2万人ほどの参加者となり一気に規模を拡大した。

シニア・バイスプレジデント
"Watsonのゴッド・ファザー"
ジョン・ケリー氏
コグニティブコンピュータのWatsonは、2007年の8月から始まった。最初Watsonは、クイズ王に挑戦し見事勝利した。とはいえ、このときからWatsonの目的はクイズに勝つことではなかった。当時からWatsonの技術をさまざまな分野で応用することを考えていたとケリー氏は振り返る。
そこから5年の月日が流れ、Watsonはさまざまな使われ方をされ、多様な意思決定のサポートをしている。
「Watsonを使うことで意思決定のスピードは速くなり、その精度を向上させています。ほんの5年で、クイズ王から癌の専門医を助けるシステムになっています」(ケリー氏)
これからの3年、5年でWatsonはさらにどんなことをやるようになるのか。
「たとえば医療関係の職業であれば、ありとあらゆるシーンでWatsonを使いたいと思うようになるだでしょう。また、企業買収の際にもWatsonを使わない企業は存在しなくなるでしょう」(ケリー氏)
ケリー氏によれば、5年ほどの近い将来であれば、予測はかなり当たっているはずだという。しかしこれが10年、20年となると予測は難しくなる。それは、テクノロジーの進化がどんどん加速しているからだ。
「1つ言えるのは、おそらく10年後には、領域によってはWatsonが未来予測をしていると言うことです。Watsonはクリエイティブになれるかと以前訊ねられたことがありますが、当時はクリエイティブにはならないだろうと答えていました。しかしその後、クリエイティブなものを生み出すChef Watsonを作っています。Watsonはさまざまなモデルを構築し、推測することができます。これを使って医療の分野では診断や治療の推奨をしています。ここではすでに数週間後、数ヶ月後に患者に起こるであろう症状を予測しているのです。つまりは未来の予測ができています。これがもっと広い範囲で可能になれば、世界を真に変えることになるでしょう。Watsonが人間と協業し、よりよい意思決定ができるようになるのです」(ケリー氏)
Watsonを使って業界をどう変えられるか、このカンファレンスでヒントを得て是非考えて欲しいとケリー氏は参加者に促すのだった。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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