――SOLIDWORKS World 2017のテーマでは「THE NEW.THE NEXT.THE NEVER BEFORE」を掲げた。メッセージに込められた戦略を教えてほしい。
バッシ氏 ソリッドワークスでは注力する分野として、「顧客のイノベーション支援」「設計から製造に至るプロセスの簡素化」「設計フェーズのパラダイムシフト」「起業家支援と教育」の4つを掲げている。顧客は既存の作業を効率化するよりも、イノベーションを創造するソリューションを求めている。われわれは、こうした要求に応えるべく、顧客がイノベーションするために何をすればよいかを考え、必要なものを提供していく。これが大枠の戦略だ。
――次期バージョン「SOLIDWORKS 2018」では、これまでオプションだったCAM(Computer Aided Manufacturing…コンピュータ支援製造。CADで作成した設計データをベースに、製造する工作機械の制御プログラミングを作成する)を無償提供すると発表した。これは、「設計から製造に至るプロセスの簡素化」の一環という位置づけか。
バッシ氏 その通りだ。われわれは、設計から製造までのプロセスを、ワンクリックで実現できようにするべきだと考えている。(設計の)アイデアから製造まで、一足飛びにいける――。それがソリッドワークスの描く未来像だ。設計から製造までの作業で、設計者の手を煩わすものがあってはならない。すべてのデスクトップ版SOLIDWORKSに、CAMツールである「SOLIDWORKS CAM」を無償提供する意味は、こうした考えに則ったものだ。
それを実現するためには、製造指示書が3Dモデルの中に包含され、製造装置が自動で読めるものでなければならない。設計から製造への流れを自動化するためには、モデルベース開発(Model Based Development)や、製造を意図したデザイン(Design for Manufacturing)が必要だ。すでにソリッドワークスではこれらの技術を導入している。
また、われわれれは、SOLIDWORKS CAMのAPI(Application Programming Interface)を公開している。(設計から製造までのプロセスを自動化するからといって)既存のパートナーシップを変えることは考えていない。
――「設計フェーズのパラダイムシフト」とは具体的に何を指すのか。
バッシ氏 これまでのシミュレーションは、設計したものを検証するフェーズで実施されていた。しかし、これからは、「設計する前に機能要件を設定し、それを満たす形状を設計する」というプロセスに変わっていく。つまり、シミュレーションは、設計の最初の段階で実施するものになる。
具体的には、設計者が「荷重」や「拘束」といった設計要件を、設計の前段階で指示する。すると、コンピュータが要件を満たす形状を自動的に算出し、提示するといったプロセスになる。
これらを実現する技術が、次期バージョン以降に搭載予定の「トポロジー最適化」や、デザイン(設計)をコンピュータが予測し、作業のガイダンスしてくれる「デザインガイダンス」に当たる。
(コンピュータが設計する)トポロジー最適化では、人間では考えもつかないような形状を提示することもある。つまり、設計の根本に関わるコンピュータの役割は、これまで以上に大きくなるのだ。CADのAは“Aided(支援)”を意味するが、トポロジー最適化のような機能は、人間の能力を“Augmented(拡張)”するものだと言えるだろう。
さらにわれわれは、教育を通じて人材育成に注力し、設計者を支援していく。例えば、近年発表した「SOLIDWORKS Apps for Kids」は、4才から3Dデザインの素晴らしさを実感できるものになっている。また、起業家に対しては、ソリッドワークスの製品をトライアルで利用できる支援プログラムも充実させている。こうした活動通じて、起業する障壁を下げることにも注力している。