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ありのまま話すぜ! Oracle CloudのOracle Databaseを使うメリット/デメリット《前編》

 クラウド環境でのデータベース利用が当たり前になりつつある現在、Oracle Cloudでも、PaaSであるDatabase Cloud Service(VM版/ベアメタル版)やExadata Cloud Serviceが提供されており、またIaaS上にOracle Databaseを導入することもできる。多くのクラウド版データベースやプラットフォームがしのぎを削る中で、あえてOracleを選択するメリット/デメリットは何か。可用性や運用管理、パフォーマンスなど、データベースの重要機能を切り口に、エンタープライズ データベースのエキスパートに聞いてみた。

ゲスト(順不同)

  • 岸和田 隆氏(株式会社アシスト)
  • 田村 慎二氏(ワム・システム・デザイン株式会社)
  • 山本 祐介氏(日本オラクル株式会社)

司会

  • 谷川 耕一氏(DB Online チーフキュレーター)

物流システム(WMS)での実績をもとにOracle DBを採用

谷川 耕一氏(以下、谷川):Oracleのクラウド版データベースとは、一体どのような特長あるいは課題があり、ソリューションで利用する場合にどんな使い方、メリット/デメリットがあるサービスなのか。公開されているスペックだけでは、明確にイメージできない部分が多くあると思います。そこで今回は、それらを知るのに恰好の採用事例ともいうべきソリューションを提供されているワム・システム・デザインの田村さんと、Oracle製品のエキスパートである岸和田さんにお話を伺いたいと思います。さっそくですが、ワム・システム・デザインのご紹介とOracle Databaseとの関わりについてお聞かせいただけますか。

田村 慎二氏(以下、田村):当社はもともとファクトリー オートメーション(FA)系の開発が主体だったのですが、現在は物流システム(WMS)構築を専門とするソフトウェア開発会社です。Oracle Databaseは、物流システムの主要データベースとして、これまで長く利用してきました。その実績から、今回開発した新しいクラウド版ソリューションのデータベースとしてもOracle Databaseを採用しました。もちろん検討段階では、Microsoft SQL Serverやオープンソースという選択肢もあったのですが、開発期間が短い中で、やはり会社の中にノウハウがあって使い慣れているものを選ぼうと考えたのです。

田村 慎二氏
田村 慎二(たむら しんじ)氏
ワム・システム・デザイン株式会社 取締役社長。
1983年高校生で某財団の最年少研究員としてハード・ソフトウェアの設計・製作及び研究開発に携わる。その後FAシステム開発に着手。2000年ごろから物流・製造大手のWMSシステム「蔵スター」を開発。近年カラーコード活用をきっかけに、ゼネコン各社向けのシステム開発に従事。

インターネットが必須ならばより利便性の高いクラウドに

谷川:新規開発のクラウド版ソリューションについて、具体的にご紹介いただけますか。

田村:ひとことで言うと、「建設現場の入退場管理システム」です。ビルなどの建設現場では、構内に出入りする人を、そのつど正確にチェックする必要があります。安全管理はもちろん、部外者や不審者の侵入を防ぐ上でも、入退場管理は重要な管理業務です。そのチェック用に各作業員のヘルメットにカラーコードをつけて、入退場ゲートに設置されたネットワークカメラで自動認識し、その情報をクラウド上の管理データベースに格納する仕組みを構築しました。カラーコードは色の配列で情報を表現するもので、従来のQRコードやICタグに比べると非常に高精度で認識率も高く、しかも省コストとあっていろいろな分野で注目を集めています。

谷川:多くの人がひんぱんに出入りして、しかも厳格なチェックが必要な建設現場には、うってつけのソリューションですね。

田村:ある大手建設会社と共同開発したのですが、当初はシステムをその大手建設会社の本社内に構築し、オンプレミスで運用していました。しかし、もっと建設現場での使い勝手がよい環境を実現しようということになり、クラウド環境を準備しました。建設現場の作業員というのは構内のあちこちに展開しているため、基本的にモバイルでないと出入りの管理が徹底できません。そのため、インターネットを経由してデータを送信していたのですが、「どうせインターネットを使わざるを得ないなら、より利便性に優れているクラウドにしよう」と考えてOracle Cloudを採用したのです。オンプレミスのときは、現場からネットワーク経由で送信されてきたカラーコード情報を、本社内のサーバーで受けていました。クラウド環境はこれが不要になり、プロバイダやネットワークといった環境構築やテストの作業負荷が大幅に軽減されました。

使いやすさと始めやすさがOracle Cloud採用の決め手

谷川:データベースをOracleにしたのは、物流システムで慣れていたからとおっしゃいました。一方、クラウドは率直に言って、Oracle以外のAWSやWindows Azureなどを選んでも同様のサービスは構築できると思います。最終的にオラクルのクラウドを選んだ決め手は何だったのですか。

田村:Oracle以外にも検討段階で“お試し”できる製品を使ってみたのですが、そのクラウドでは試用可能範囲のスペックが低すぎて、思うような速度が出せませんでした。また、課金体系が複雑で、費用算出の見通しがつきにくかった。これだと、お客様に精度の高い見積もりを出すのが難しくなります。一方で、SLA(Service Level Agreement)は魅力的でしたね。ただ、それにも増してOracleのインスタンス作成の容易さが、限られた期限内での開発効率アップに貢献する期待がありました。言ってみれば、使いやすく始めやすかった点が、Oracle Cloud採用の一番の決め手になりました。

谷川 耕一氏
谷川 耕一氏(たにかわ こういち)氏
EnterpriseZine/DB Onlineチーフキュレーター。
ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにしたソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋を履いている。

谷川:オンプレミスから移行する際、開発を担当するエンジニアの反応はいかがでしたか。

田村:クラウドの開発環境自体はすでに他でも使っていましたが、やはりプラットフォームは各社ごとに特徴があるので、Oracle Cloudのそれに慣れる必要はありました。とはいえ、基本的にインスタンスを作成するまでは、どこの製品でもほぼ同じなので問題なく行えました。一番難しかったのは、クラウドで避けられないネットワーク系の設定です。ここはかなり苦労しました。

谷川:クラウドでサービスを提供するにあたって、非常に重要なポイントの一つが可用性の確保です。この入退場管理システムを停めない、つまり可用性を確保するために、どのような工夫をされましたか。

田村:こちらで何か工夫をしたというよりは、Oracle Cloud自体のSLAが十分に高く設定されているので、そこでまず信頼性を担保しています。もちろんバックアップも確実に取られているので、万が一のことがあっても確実にデータを復旧できる安心感もあります。このソリューションのオンプレミスのバックアップは簡易的なものだったので、完全に障害発生時のデータに復元することは難しく、なおかつ復旧の時間もかかりました。加えて物理的に壊れることも多くて、修復もかなり大変でした。

谷川:そのあたりは、自前でハードウェアやネットワークを抱えるオンプレミスでは避けられない課題ですね。

田村:とくに当社は本社が大阪なので、東京にあるサーバーをリモートでメンテナンス/リカバリする場合など、電話で「ちょっと電源入れてみて」などと言いながら手探りで進めなくてはならず、毎回大変な苦労でした。その点クラウドならば、手元にハードウェアがあるのとまったく同じに扱えます。クラウド化したことで、ユーザーの利便性も向上しましたが、運用する側も非常に楽になりました。

次のページ
「DBをクラウド移行できるか?」の3つの判断ポイント

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この記事の著者

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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