Twilio Japan(以下、Twilio)は2026年9月10日、AI時代における顧客体験(Customer Experience:CX)の最新動向と課題を分析した調査レポート「Twilio 顧客インサイトシリーズ 2026 日本編」の発表にともない、オンライン記者会見を開催した。会見には同社 代表執行役員 社長の久保敦氏が登壇し、日本国内およびアジア太平洋地域(APAC)における比較データを引用しながら、技術の活用実態や今後のカスタマーエンゲージメント戦略について解説した。
今回の調査は、世界18市場における消費者7,652名(うち日本国内351名)およびビジネスリーダー660名(うち日本国内34名)を対象に、2026年4月9日から5月1日にかけて独立調査機関であるMethod Researchにより独立して実施された。
久保氏は、企業と消費者の間で顕著となっている認知の摩擦について詳述。日本企業の83%は「自社のAIはリピーターや過去のやり取りを正しく把握している」と自負しているのに対し、日本の消費者の54%は「AIに過去に一度伝えた情報を再度伝える必要がある」と回答しており、双方の認識に隔たりが存在している。
このギャップを発生させている最大の要因は、社内システム間における顧客データの分断、すなわちデータのサイロ化だ。AIチャットボットから人間のオペレーターへと対応が引き継がれた際、日本の消費者の67%が同じ説明を繰り返さなければいけない事態に直面していると回答した。これはAPAC平均の65%を上回る数字である。
さらに、AIに基本的な顧客情報やアカウント情報が不足していたことが原因で、日本の消費者の50%がAIとの対話ややり取りを途中で断念した経験をもち、最悪のケースとして3%の消費者がそのブランドの利用自体を完全にやめたと回答。消費者が評価するAIのメリットとしては、第1位に「24時間365日利用できること」(42%)、第2位に「消費者の要望を正確に理解できること」(33%)、第3位に「必要に応じてスムーズに有人対応へ切り替えられること」(30%)が挙げられているが、現実には日本の消費者の73%が「AIの処理速度は速いものの、過去のやり取りや背景を踏まえていない」あるいは「必要な情報は把握しているものの応答に時間がかかる」といった不満を抱えている。
また、会話の開始時にAIが対応していることを明示すべきだと答えた日本の消費者は59%(APAC平均は70%)にのぼるが、実際に会話の開始時にAIであることを明示している日本企業は21%(APAC平均は22%)にとどまり、情報の透明性に対する取り組みにも乖離が見られる。
日本の消費者が安心してAIを利用するために重視する条件として、希望に応じて容易に有人対応へ切り替えられること(59%)、AIが重要な判断を行う際に人による承認があること(50%)、AIがどの顧客データにアクセスできるのかを把握できること(38%)が挙げられた。
これに対する日本企業の取り組みとしては、AIによる特定アクションの実行前に人による承認を必須としている企業が44%でAPAC平均の34%を上回り、速やかな有人対応への切り替えの仕組みを整えている企業も38%に達している。一方で、AIによる判断根拠を示す「説明可能性」の機能を導入している日本企業は29%にとどまり、APAC平均の47%と比べて後れをとっている。
なお、消費者のAIに対する受容性は向上しており、日本の消費者の58%が「過去1年間でAIチャットボットの性能が向上した」と実感し、41%が「昨年と比べて有人対応よりもAIチャットボットを選ぶ傾向が高まった」と回答している。さらに、異なる企業のAIエージェント同士が直接連携して問題を迅速に解決することに対しても、日本の消費者の70%が「抵抗はない」と肯定的な回答を示した。
久保氏は「企業が提供できていると考える体験と、消費者が実際に受けている体験には大きな乖離がある」と語り、顧客体験における現状の課題を指摘した。この課題を解決するためには、顧客を「忘れる」AIから「継続性のある顧客体験」へと移行するための以下3つのアクションがあるという。
- 最初からAIであることを明示して信頼関係の基盤となる透明性を確保すること
- AIから人への引き継ぎやチャネル変更が生じても、同じ説明を繰り返させないようやり取りのコンテキストを引き継ぐこと
- AIが顧客を深く理解できるよう、分断された顧客データをつなぎ一元化すること
これらの課題解決を具現化する対話プラットフォーム基盤として、Twilioは「Twilio Conversations」を提供している。同プラットフォームは、個別の通話やメッセージを単一の継続的な対話体験へと統合する「Conversation Orchestrator」、すべてのチャネルにわたる顧客の履歴や嗜好を保持する「Conversation Memory」、生成AIを活用してリアルタイムの対話を分析する「Conversation Intelligence」、ポイントの管理や音声ストリーミング、ID管理を一元化する「Agent Connect」の4つのモジュールから構成されている。
日本のビジネスリーダーは、AIが顧客対応を担う割合が現在の47%から2027年には61%にまで拡大すると予測している。久保氏は「AIが進化するほど、顧客体験において重要になるのは人をどれだけ理解できるかだ。TwilioはAIと人が顧客の文脈を共有し、一つひとつのやり取りが途切れることなく一貫した顧客体験につながる世界を実現していきたい」と語り、会見を締めくくった。
【関連記事】
・Gensparkの電話対応AIエージェント、基盤にTwilioのリアルタイム音声プラットフォームが
・AIでなく人間のカスタマーサポート対応を希望する日本消費者は26%──Twilio調査
・「個人データを企業に安心して預けられる」と回答した顧客は7%──Twilio調査
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
