クラウドならRACやData Guardでの災害対策構成も簡単に構築可能
クラウド上で新規にミッションクリティカルな構成を作る際には、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナという4つのレベルの可用性を選ぶことができる。4つのレベルにクラウドサービスを当てはめると、それぞれの構成をマッピング可能だ。ブロンズレベルは、ハイブリッドの梅構成のクラウド版となる。リージョン1、リージョン2で梅構成を構築するイメージだ。まずは同じリージョン内にバックアップを取得し、それを定期的にリージョン2にコピーする。Database Cloud ServiceのEnterpriseかStandardで利用でき、Database Backup Serviceを組み合わせることになる。使い方はハイブリッドの梅と同様だ。
Database Cloud Serviceでバックアップを取得するには、インスタンスを作る際に選択するだけだ。それでオブジェクトストレージにバックアップが取得できる。基本は日次でデータファイルがバックアップされ、アーカイブログは30分に1回取得され、ローカルに7日間、オブジェクトストレージに30日間保持される。
バックアップは取得するだけでなく、戻すことが重要だ。実際に戻せるかどうかに関わるファイルが足りてるかどうかのチェックなどは自動で実施される。ブロンズ構成では、データ破損、データベース再起動不可、サイト障害などが発生した際に、直近のバックアップ取得のタイミングに復旧できる。
シルバーでは、ブロンズのリージョン1のシステムをRAC構成にする。これによりリージョン1でノード障害が発生してもサービスは継続できる。OSのパッチやデータベースのパッチを適用する際には、ノードを縮退運用し順番に当てることでサービスを止めずに行える。
オンプレミスでRAC構成を構築するのにはそれなりに手間がかかるが、Database Cloud ServiceであればRACを構成するにはチェックボックスにチェックを入れるだけだ。シルバーでは、計画外の停止においてもシステムの停止時間は数秒程度で収まり、計画停止はゼロダウンタイムを実現できる。
シルバー構成では、Data Guardを活用する方法もある。Data Guardの利用も、Database Cloud Serviceならば「HA」の項目にチェックを入れるだけだ。これで同じリージョン内にスタンバイを置ける。Data Guardの場合も、計画外停止でも数秒から数分の停止で復旧する。データベースのアップグレードも短時間化でき、アプリケーションをスタンバイと切り替えながら更新することで数秒から数時間の停止で可能だ。
ゴールドの構成は、それぞれのリージョンでRACを組みリージョン間はData Guardで連携する。ここまで実施すれば、サイト障害が発生しても運用を継続できる。この場合のData Guardの利用も「DR」にチェックを入れるだけだ。この構成では、メンテナンスによる停止時間もゼロにできる。
さらにプラチナ構成では全てをRAC構成にする。その上でローカルリージョン内でもData Guardを利用し、リージョン間もData Guardで連携する。加えて適宜Golden Gateも組み合わせる。さらにApplication Continuityも利用すれば、計画外停止もゼロダウンタイムを実現できる。
このようにパブリッククラウドを利用することで、さまざまなレベルの高可用性構成を容易に実現できる。とはいえ規制やレイテンシーの要件が厳しいなどで、パブリッククラウドに持って行けないこともあるだろう。Oracleの場合には、パブリッククラウドと同じような使用感で使え、その上で顧客のデータセンターにシステムを置きOracleが下位レイヤーを管理するOracle Cloud at Customerもある。これであればクラウドのメリットを享受しながら、ネットワークの遅延などの影響も受けにくい環境が実現できる。
「Oracleでは、オンプレミスでMAAを実現してきました。この考え方はクラウドにも適用できます。MAAはオンプレミスかクラウドかにかかわらずミッションクリティカル環境を実現できるアーキテクチャです」と、クラウドで高可用性を実現するためにもMAAのアーキテクチャを適用してほしいと、佐々木氏は締めくくった。