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緊急度が高い“経営イシュー”としてのバックオフィスのDX──経理や人事が起点となる経営変革とは?

ゲスト:スーパーストリーム株式会社 取締役 企画開発本部長 山田 誠氏

 ここ数年、企業経営におけるDXの重要性が認識されるようになったものの、営業やマーケティングなどのフロントオフィス業務に比べてバックオフィス業務ではDXがあまり進んでいない。そのような状況に対し、バックオフィスこそ早急にDXを進めなければいけないと訴えるのがスーパーストリーム株式会社 取締役 企画開発本部長 山田 誠氏だ。日本の9,400社以上に活用される会計・人事給与システムを提供する立場から、バックオフィスの変革を進めるべき理由と進める際のポイントや成功事例をお話しいただいた。

経理や人事は“クール”な業種。企業の屋台骨となる業務を変革する

──経理や人事などのバックオフィスのDXがあまり進んでいないのは、なぜでしょうか。

山田 誠氏(スーパーストリーム株式会社 取締役 企画開発本部長、以下敬称略):経理部門や人事部門は、ルーティン業務がものすごく多いという特徴があります。

 もちろん、部門の責任者なのか現場の担当者なのかといった立場によってその割合は違います。しかし経理であれば月次決算や四半期決算、年次決算に向けて、いろいろな伝票の登録、チェック、承認といった作業やERPのようなアプリケーションを運用し、財務諸表や経営会議のための様々なレポートを作っていくということがメインの業務になります。

 人事部門の場合も、月次の給与計算の他に、賞与、社会保険の計算、住民税の支払い、年末調整……と、年間の給与業務の流れが決まっているんですね。つまり、ルーティン業務の占める割合が非常に多いわけです。

 また、社内外における紙のやり取りが非常に多く、それにハンコを押す文化もある。そのために基本的には会社で作業をすることが前提になっているのも、これらの部門の特徴です。

──「ニューノーマル対応」として、バックオフィス部門であってもDXを進める必要がありますね。

山田:バックオフィス部門だからこそ、が正確かと思います。というのも、コロナ禍で一番会社に通っていたのは、おそらく経理部門や人事部門の方だったでしょう。でも、この方たちは企業の屋台骨ですよね。財務や決算、給与、取引先への支払いが遅れるなんて許されない。経理と人事が止まったら会社は崩壊します。そういう方が感染の危険性がある中で通勤しているというのは大きなリスクです。そこは、“経営イシュー”として絶対に変えなければいけません。

──普段から滞りなく仕事をしてくれているからこそ、その重要性が気づかれにくのかもしれません。

山田:一般的には社内で屋台骨の地味な存在ですが、本当は一番経営基盤を支える“クール”な職種なんです。でも、今までは光が当たりづらく、会計や人事給与関連のシステム投資も控えめになりがちでした。今は当たり前が当たり前じゃなくなる時代です。経営の根幹の部分に手を入れて、もっと効率的にしていく必要があります。

3つのポイントで理解する「バックオフィスのDX=BX」

──御社が考えるバックオフィスのDXとはどのようなものでしょうか。

山田:私たちは、バックオフィスのデジタル・トランスフォーメーションを「BX」と言っています。というのも、経理や人事の担当の方に「DXってわかりますか?」と聞いても理解しづらいのです。DXというとIoTや次世代通信5Gのイメージが強く、経理・人事の方からすると自分たちの業務と直接関係あるように思えないんですね。

 そもそもルーティン業務を確実にやっていくということが評価される部門だったので、一番変わりたがらない職種だとも言えます。ですが、ルーティン業務が多いからこそ、そこから人を解放して革新的に生産性を上げていく必要があり、これからはBXに向かっていくべきだということをお伝えしたいんです。

 具体的にはBXのポイントは3つあり、まずひとつが「紙の撤廃(ペーパーレス)」です。ハンコも含めてなくしていくものです。もうひとつは「AIやロボティクスの活用」、3つ目が「クラウドの利用拡大」です。

バックオフィスのDX

──バックオフィスのDXである「BX」に成功している企業の事例を教えてください。

山田:東証1部上場の自動車部品メーカーのお客様は、経理の大変革をされ紙をなくしました。領収書とか請求書などを全部スキャンして電子化し、ワークフローシステムで回していくようにされたんです。

 多くの企業では、領収書や請求書の原本やコピーをファイルに綴じ、過去3年分を全部倉庫に保管するようなことを、当たり前のように続けています。これをなくすというのはすごく重要なことなんですよ。

──関連法規を遵守した上で、ペーパーレス化を実現できたんですね。

山田:電子帳簿保存法のスキャナ保存制度に対応し、証憑をすべてPDF化し、タイムスタンプを付与して版管理をしています。そうすると、監査や税務署の確認などが来たときにも、伝票ナンバーを入力すれば元帳と証憑をPDFでサッと出すことができます。非常にクールですよね。

──法律は時代に合わせて変わっているのに、“現場”は昔の習慣に縛られたままということも多そうですね。

山田:要は、変わることが嫌だと言えますね。紙をなくすにしても、最初はスキャンする手間が増えます。でも、それは個別の手間が一時的に増えるだけで、全体で考えれば手間は確実に減るので変えるべきです。こちらの企業様も、以前は領収書を紙に貼って提出することになっていました。それをスキャンしろとお願いしたら、ちょっと手間が増えるような気がして最初は嫌がられるわけですが、説得して回った。システム導入だけでうまくいくのではなく、地道に関係部署に説明に伺う責任者の努力があったことがポイントです。本気で変革をされたということですよね。

バックオフィスのDX

経理や人事のルーティン業務の“約4割”はRPAに任せられる

山田:2点目にクラウドの話をしますと、これがリモートワークの前提になりますよね。あるお客様は、会計システムがクラウド上にあるから、たとえ実家に帰っていても仕事が滞らないとおっしゃっていました。

──個人情報を扱うような高いセキュリティ管理が求められる仕事は、出社しなければできないという話もよく聞きます。

山田:人事部も経理部もマイナンバーを扱いますし、セキュリティ管理は当然必要です。ただ、クラウドだからセキュアじゃないというのはおかしいです。

 最近は通信も当然暗号化されていますし、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)があれば専用線も利用可能です。ですから、クラウドだからセキュリティが不安、というのはかなり昔の話ですよね。実際、私たちのお客様の中でも規模の大きな吉野家ホールディングスさんは、会計システムをすべてクラウドに上げていらっしゃいます。

 そうすると、リモートワークでほとんどの業務ができるようになるし、固定費の面からも自社でサーバーを所有して管理するより合理的です。

──「クラウドはセキュリティが甘い」というのは、いわば“都市伝説”なのかもしれませんね。

山田:そうですね。では、最後にAIやロボティクスに関してですが、冒頭にお話しした経理や人事のルーティン業務の4割くらいはRPAに任せることができます。

 経理であれば伝票の登録だとか、月次レポートを定期的にメールで配信するとか、このような作業を人がやる時代ではなくなっています。人事部門の例では、お客様の要望で作ったものに「雇用契約書の作成」という機能もあります。有期雇用の従業員に、契約期限の3ヶ月前に更新の意思を確認するための契約書を作って提示しないといけません。これを個々の従業員に合わせて作る作業が膨大だということで、ロボットができるようにしました。

 また、これから非常に期待できるのがAIで、例えば経理部にはいろいろなフォーマットの紙の請求書が郵送されてくることもあれば、メールで送られてくることもあります。また、EDIといって電子データで請求がくることもあります。私たちとしては、これらをいったんPDFにすれば、AIがすべて読み解いて処理するという機能を提供しようとしています。

 例えば、NTTの請求書を読み取ると「これは公共料金で、電話代金」と判定し、日付や金額などを認識して仕訳の勘定科目まで推論するんです。同じNTTの請求書でも、ネットワーク回線の利用料であれば勘定科目が変わります。そういうことをどんどん学習し、賢くなっていくAIです。これまで左手で伝票をもって右手でテンキーを打って伝票登録していたものを、すべてスキャンしてクラウドにアップロードすれば、あとは自動でやってくれる、そんなことを実現していきます。

会計システム | SuperStream-NXの便利な機能で経理業務を効率化!| スーパーストリーム株式会社【公式】

常に多忙な経理や人事の「仕事が奪われる論」は“妄想”である

山田誠スーパーストリーム株式会社 取締役 企画開発本部長 山田 誠氏

──AIやロボティクスをうまく活用されている企業の取り組みを教えて下さい。

山田:東証一部上場のIT企業であるJBCCホールディングス様は、グループ内でシェアードサービスを提供している、C&Cビジネスサービス株式会社様において弊社のSuperStream-NXを導入していただいています。

 お客様が取り組まれた事例では例えば従業員情報の登録について、社内のワークフローシステムで回覧・承認されたExcelファイルに対して、RPAを起動してSuperStream-NXを起動し、グループ内の会社ごとに画面を切り替え、社員の情報を入力・更新するのを自動で行われるようにしています。あとは従業員の経費精算チェックなどにもRPAや、他にはチャットボットも活用し、雑多な作業を人がやらなくて済むようにしたことで12,000時間、割合にして28%の工数削減を実現したそうです。

───それは大きいですね。

山田:このお客様の素晴らしい点は、シェアードサービス部門としてグループ内で業務委託費用を受けているので、こういった革新的な取り組みが評価されるんです。コストを減らせばグループ全体への貢献とみなされるわけです。だから非常に意欲的に改善をされるんですね。

 また、残業時間が減ったらチームに報奨金を出すこともされているようです。残業代が減れば会社の利益になるので、それを還元しようという発想なんですね。素晴らしいですよね。

──ただし、少し前まではAIやロボットに仕事が奪われるということが盛んに言われていましたが……。

山田:大丈夫なんですよ。経理や人事の担当者は、この業務を経験したことがない人が外から見ている以上に忙しいんです。しかも仕事の内容は年々難しくなっています。

 昔は給与計算ができれば褒められたわけですが、今は勤怠ひとつとっても、36協定(労基法36条に基づく労使協定で、労基署への届け出なしの法定労働時間外労働を禁ずるもの)のチェックもしなければいけないし、代休だって時間代休のような複雑な概念が出てきたりしています。マイナンバーの管理もあります。そして、部門ごとや職種別の人件費の分析や、従業員のモチベーションをいかに維持するか、企業の理念やバリューをどう浸透させるか、といったことが人事の大事な仕事になってきています。

 経理部門も同じで、単純な財務諸表を出すだけではダメで管理会計もやらなければいけないし、消費税はどんどん変わるし会計基準も新しいものが次々に出てくるんです。経理も人事も忙しい上に人は減っているので、単純作業はロボットに任せないと逆に回らないですよ。

──なるほどですね。

企業を超えたビッグデータを活用し学習する「クラウド上のAI」

──バックオフィスのDXを推進していくに当たって、今後はどのような展開を予定されていますか。

山田:人工知能の可能性を活かしていきたいですね。

 AIというのは教師データとそれに付与されたアノテーション(データの意味や分類を表すタグ情報)がどれだけ多いかがポイントになってきます。先ほどお話しした請求書のPDFをどんどん読ませて仕訳を推論するというのも、1社だけのデータではボリュームが足りないんです。ですが、会計システムを提供している会社がやれば十分な量になるはずです。私たちは今、約9,400社のお客様がいますから、その9,400社がクラウドでつながれば、請求書のデータをAIが学習することができます。どんどん利用されればされるほどパターンが増え、学習が進んで賢くなっていくんです。

 ERPも、スタンドアローン、オンプレミスで一企業に閉じている状態では進歩がありません。今後5年、10年後を見据えると、クラウド上で学習するAIのサービスが注目されていくでしょうし、私たちとしてもそういうものを提供していくことを目指しています。

──「クラウド上で学習するAI」、BXの中核的な機能になりそうですね。本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。

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※本記事はBiz/Zineで公開された記事の転載となります。

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