水ぬるむ春ですが…
日差しも強くなってきました。春の陽気は厳しいビジネス環境を少しのあいだ忘れさせてくれます。世間では、「6割経済」や「ハーフエコノミー」とかいう言葉がメディアに登場していて、これはピーク時より売上げが5割、6割に減っていることを言うのだそうです。
多くの企業が決算発表をしていますが、こうした厳しい状況がしばらく続くという予測が多いようです。需要の回復見通しも楽観的なものは少なく、在庫削減、生産調整、生産拠点の統廃合などが急速に進んでいます。
システムを取り巻く環境も同様です。景気の底を見極めてからでなければIT投資には踏み切らないという判断を下す企業が多数を占めています。新規投資は言うまでも無く凍結。すでに着手しているプロジェクトを凍結・中止するところも増えています。これからが正念場でしょう。
ERPの本来の目的
さて少し話は変わりますが、本連載のメインテーマであるERPが登場したのは1990年半ばです。米国のリセッション(景気後退)が1990年前後のことでしたから、米国企業が市場成長の見込めない北米市場から欧州市場など世界へビジネス拡大を狙った頃にあたります。
当時、欧州やアジアなど世界市場へ進出した多くのアメリカ企業は、他通貨・多言語・各国法規への対応というシステム課題に直面しました。そして、標準化とパッケージというコンセプトで、これらのニーズに応えた仕組みとしてERPは登場したのです。ベストプラクティスという宣伝文句と、業務の標準化による経営資源・情報の最適化が最大限のコスト削減を実現するというものでした。
結局、この仕組みは幅広く受け入れられました。現在大企業の7割以上、中堅中小企業の半分程度がERPを利用しています。その基本コンセプトにあるのが、ヒト、モノ、カネといった経営資源をムダにせず活用するための情報共有基盤という考え方です。
言い換えれば、ERP本来のねらいは情報化によるムダの排除=コスト削減にあるわけです。しかし、コスト削減目的で導入したERPが、現実にはコスト削減の足を引っ張ることがあります。