チーフ・データ・オフィサーとチーフ・デジタル・オフィサーは何が違うのか
チーフ・デジタル・オフィサーは、ビジネス上の問題をデジタルの力を用い解決する役割を担う。ITよりも、どちらかと言えばマーケティング領域の業務に携わることが多い。顧客との関係性を改善し顧客の多様な要求にタイムリーに応えられるようにする。そのために、必要なアプリケーションなどを開発する指揮を執ることもある。また顧客との新たな接点を管理するために、クラウドの活用を推進することもあるだろう。
一方、チーフ・データ・オフィサーは、企業の中でデータを主管する立場となる。社内で活用するためのデータをいかに用意するのか。業務に必要なデータを、タイムリーに使えるようにする。それをサービス化することにも取り組む。さらに、提供するデータから知見を得るためのアナリティクスの仕組みの構築も担当するだろう。また、企業内で適切にデータの管理ができているかの責任も負う。企業においてデータ扱う上で必要なコンプライアンスやガバナンスのための管理も担当範囲だ。これらを推進するチーフ・データ・オフィサーの業務は、IT系と見なされることが多い。
米国Qlik本社でCDO(チーフ・データ・オフィサー)を務めているジョー・ドスサントス氏は、これら2つの立場は「パートナー関係にあります」と言う。チーフ・データ・オフィサーの役割は、データの質を向上させ、それをタイムリーに活用できるようにすること。それによりチーフ・デジタル・オフィサーが生み出すアプリケーションの効果などを高めることにつなげる。
チーフ・デジタル・オフィサーがデジタル戦略の目標をチーフ・データ・オフィサーに提示し、その目標達成を支えるためのデータ分析環境をチーフ・データ・オフィサーが用意する。つまりはこの2つの役割の連携、パートナーシップは、デジタル変革実現のために極めて重要なものとなるとドスサントス氏は説明する。
チーフ・デジタル・オフィサーとチーフ・データ・オフィサーでは、求められるスキルセットが異なる。前者は、顧客などと向き合い、関係性を深めるためにSNSをどう活用するか、消費者がどのようにモバイルアプリケーションを活用しているかなどを把握し、それを自分たちのビジネス価値にどう適用するかを考える。つまりはデジタル変革を実現する道筋を考えるスキルが必要となる。一方チーフ・データ・オフィサーは、データ分析環境をどう構築し、可用性をどう確保するか、さらには社員のデータリテラシー向上のために何をすれば良いかなどを考えるスキルが求められる。
「チーフ・データ・オフィサーもデジタル変革実現の一部を担いますが、むしろそのためのデータの正確性を担保するといったところにより力を入れることになります。場合によっては、従来型の経営管理レポートをきちんと出せるようにする仕事も含まれます」(ドスサントス氏)