部門ごとに異なるデータベース、統合の鍵に「Snowflake」を選定
Snowflakeを導入するに至ったきっかけは、「統合データベース」の必要性からだった。中外製薬には、多くの研究者が在籍しているものの、誰がどこでどのような研究をしているのかがハッキリと共有されていなかったという。また、中外製薬の国内における創薬研究に関わる機能を集約し、最先端の設備を備えた新たな研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」のオープンも控えていた(2022年10月に竣工)。そういった動きのなかで、属人的な状況から脱却し、これまでバラバラになっていたデータを統合した基盤を作ることが求められていたのである。
そこで、Amazon Web Services(AWS)などのパブリッククラウドと親和性があり、構造化・非構造化問わず、さまざまなデータを取り扱えるソリューションとして選ばれたのが「Snowflake」だった。全社統一のデータ基盤を整備することで、コストメリットだけでなく、ガバナンスを効かせることも可能になる。
特に選定においては、特定のクラウドに依存しないマルチクラウドを目指していたこともSnowflakeを評価するポイントとなった。志済氏は「今はAWSを利用する割合が高いものの、将来的にはGoogle Cloud Platformなどの利用も検討しているほか、戦略的アライアンスを締結しているロシュ社(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ:スイスに本拠地を置く、世界有数の製薬企業)などもクラウドを使用しています。そのようにさまざまな使い方を想定したとき、データ基盤としてマルチクラウドに対応していることは、とても重要だと思います」と評価する。
今後のSnowflakeの活用については、「重要なデータの二次利用や、共通の利用といったことをもっと進めていきたいと思っています」と志済氏が話すように、現在進行形で各部門が積極的にデータ基盤を整備している。新しくデータベースが構築されたときにも、Snowflakeによって統一していくことをデジタル戦略推進部が主体となって進めていく。既にSnowflakeのノウハウが蓄積されて、技術的なアドバイスもできるようになっているため、継続して全社での統一化を図っていくことを目指していると意気込みを見せた。
AI活用、新薬開発のため「データそのもの」にこだわる
今回、2022年のSnowflake Data Drivers Awardsにおいて、DATA EXECUTIVE OF THE YEARを受賞したことについて、志済氏は受賞結果はチームの力のたまものといい、「私自身は全社の方向性を決めていく人間なので、それにあわせてソリューションを選定してくれたメンバーに感謝したいと思います」とコメントする。
これからはCHUGAI DIGITAL VISION 2030に則って、R&D領域で早く成果を上げていくことを目指していく。最後に志済氏は「データに、とことんこだわっていきたい」とAI活用、新薬開発の基礎となるデータの整備に力を入れていくと語る。そして、中外製薬におけるITのレベルを上げ、それによって何ができるのかを追求していく流れにしていきたいと、デジタル戦略の方向を示した。今後も志済氏のらつ腕に期待がかかる。