日立が期待に応えられた理由、それはOCIの知見だけではない
日立には、30年以上にわたりOracle製品を扱ってきた歴史がある。OCIの展開が始まった2019年には、国内でいち早くテクニカルサービスを提供し、Oracle DatabaseとOCI双方の豊富な経験・知識を蓄えてきた。さらに、日立にはもともと金融や公的機関などにおいてミッションクリティカルなシステムを構築・運用してきたSIの知見が豊富に備わっている。
OCI上のデータベースでは、レイテンシーがどれくらいになるかだけでなく、実際のミッションクリティカルなアプリケーション環境で、オンライントランザクションのレスポンスや、バッチ処理の性能がどうなるかが重要だ。日立はそういったところまでOracleと共同で検証し、実践的なノウハウを蓄積している。
また、日立は、OCIとMicrosoft Azureの環境における処理性能や可用性について両社で共同検証し、その結果をQiitaで公開している。このように、OCIはもちろんAzureやAWSなどもサポートし、マルチクラウドやハイブリッドクラウドに対応できるのも強みだ。たとえば、みずほリースの場合、クラウドのメイン利用がAzureであるため、OCIとAzureの組み合わせでどのようなことが実現できるのか、今後はそのあたりの技術的なアドバイスも日立には期待される。
これらの日立のノウハウを注ぎ込み、迅速かつ信頼性の高いクラウドへの移行を実現するスターターパックのテンプレートは、半年以上の時間をかけて設計・開発され、クラウドの進化に合わせて最新状況に対応できるよう、継続的に更新されて続けている。スターターパックでは、要件の確認から設定に落とし込み、それをもとに一連の処理がテンプレート化されている。たとえば、要件のヒアリングシートも標準化されており、それを使って得られた結果から、自動的にOCIのデータベースの最適なパラメーターなどが導き出せる。
ただ、それだけで短期間での構築は実現できない。一般的にミッションクリティカルな基幹系システムというのは、それが安定しているのであれば極力手を入れたくないものだ。とはいえクラウド化すれば、そこに新しいOCIの要素を取り込み最適化する必要も出てくる。OCIの技術的なトレンドを把握し、バージョンが古くても適用できるものを適宜選択する、柔軟な対応が必要だ。
OCIを利用する企業には、Oracle Databaseを基幹系システムで利用しているケースが多い。そのため、そこからデータを取り出し、クラウドに移して活用したいという要望も多い。これをスムーズに実現するためには、OCIだけでなく基幹系システムのOracle Databaseを熟知している必要があり、ここが外せないポイントとなる。
オンプレミスでの安定したミッションクリティカルシステムの構築と運用実績に加え、クラウドでのノウハウを活用し、迅速性や柔軟性といった特長をうまく組み合わせる。これら両方のノウハウが日立にあるからこそ、今回のような迅速な構築が成し遂げられた。もちろん裏側では、前述のOCIとAzureの共同検証のように、基幹系システムをどう最適にクラウドで動かせば良いかの検証を常に行っている。
基幹系システムのクラウド化では、顧客から細かい要件が出てこなくても取り入れるべきことがたくさんある。スターターパックは、それらを意識したヒアリングシートにもなっており、その上で運用を意識したところまで配慮がなされている。
みずほリースでは、情報系のシステムをOCIにオフロードできたことで、本番システムに影響を与えず、柔軟に複雑な分析処理などが可能な基盤が得られた。現状、同社はこのOCIのBase Databaseの環境に、Azure上のツールからアクセスし利用している。今後は、今回の基盤をベースに、データを一元的に分析できる環境、そして外部のデータも取り込める環境に進化させるという。その際には、OCIのAutonomous DatabaseやExadata Database Serviceなどの活用も考えられ、日立は要件に応じこれらを提案する。既にこれらもスターターパックに対応しているため、採用が決まれば迅速かつ信頼性の高い構築が可能だ。
また、みずほリースは生成AIの活用も視野に入れているが、これも新しいOracle Database 23aiの利用でスムーズに実現できるだろう。日立はOracle Database 23aiについても、AI機能の検証をいち早く行っている。今後は、このソリューションをどのように活用していけばよいか、日立社内のAIセンターなどとも協働して提案することになる。最新のOCIとOracle Databaseの良い部分に、日立はいち早く追随しているため、みずほリースに対しAI活用の面でもより良い提案が素早くできるはずだ。