生産性向上の鍵は「IT部門とビジネス部門の連携」
昨今、9割超の企業が賃上げを行っていることから、その分を補填するべく、生産性向上に向けた取り組みがより重要視されつつあります。こうした取り組みにはもちろん、デジタル技術の導入・活用が欠かせません。生産性向上に向けた企業の取り組みとして多く実施されているのが、直接的に業績を伸ばすための「営業力・販売力の強化」や「商品・サービスの高付加価値化」。これは約4割の企業が実施しています。次いで多くの企業が選択している項目は「デジタル技術の導入」であり、約3割の企業が選択しているそうです※1。
こうして賃上げから生産性向上、デジタル技術の導入までの関連性を考えると、ビジネスで成果を出すためにデジタル技術を導入・活用するという関係性、つまり目的と手段の関係性が一層明確になっているようです。これらを踏まえて、会社の組織に目を向けてみましょう。
収益を高めていくためには、ビジネス部門が営業力・販売力を強化し、商品・サービスの付加価値を高めるための企画を実行していくことが求められます。そしてIT部門は、それらの活動を支えるためにデジタル技術の導入・活用を支援していくことが求められる。それぞれ異なる役割を担った2つの部門が協力しあうことで、DXを進めていくことが重要とされます。
IT人材不足を解消? “採用以外の手段”に注目集まる
需要の高まるIT部門やDX部門の人材ですが、人手不足は深刻化する一方。情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によれば、DXを推進する人材が大幅に不足していると回答した企業の割合は49.6%にのぼります※2。同レポートより、人材不足を感じる企業の割合は増加傾向にあることから、慢性的な人材不足にあり、状況は深刻化しているといえます。そしてこれだけ不足しているので、企業は当然新しい人材の採用によって人材の補充を試みています。
実際、転職支援サービスdodaが公表する「転職求人倍率レポート」からは、IT職種の有効求人倍率は12.27倍になっていることが分かります。特に、コロナ禍を境にIT職種の有効求人倍率は5倍前後から10倍超に変化しており、労働市場全体でIT人材の不足感が深刻化しているのです※3。
このように有効求人倍率が高いこともあり、多くの企業が思うように人材採用で成果を出せていません。そこで、採用以外の手段によって人材不足を解決する取り組みに注目が集まっています。リスキリングやデジタル人材育成に注目が集まっているのも、そうした課題を乗り越えようとする企業の取り組みによるものだと考えられます。
なかでも、注目されているのが「ビジネス人材をIT部門へ異動させる」という施策。これにはジョブローテーションによる異動だけでなく、組織戦略上の意味を持った異動も含まれます。ビジネス人材に対して、リスキリングによってIT専門スキルを身に着けてもらい、IT部門で活躍してもらうという取り組みです。詳しく見ていきましょう。
[1] 参考:厚生労働省ホームページ『令和5年版 労働経済の分析 -持続的な賃上げに向けて-』
[2] 参考:情報処理推進機構(IPA)『DX白書2023』(2023年3月16日)、20ページ
[3] 参考:パーソルキャリア『転職求人倍率レポート』(2024年4月)