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組織の連携を強化するレベニューオペレーション(RevOps)とは? 要となるCROの役割も解説

 企業が持続的な収益成長を目指すために、レベニューオペレーション(RevOps)が注目されています。アメリカでは大手企業の6割以上が導入するほど普及しており、RevOpsを束ねるチーフレベニューオフィサー(CRO)がいる企業では収益成長率が同業他社に比べて1.8倍も高いのです。今回はこのRevOpsやCROの役割について、『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書』(翔泳社)から解説します。

 本記事は『レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識』(著:川上 エリカ/丸井達郎/廣崎依久)から抜粋したものです。掲載にあたって再構成・編集しています。

個の力から、専門性の高い協業組織モデルへ

 レベニューオペレーション(Revenue Operations:略称RevOps)は持続的な収益成長を実現するためにレベニュー組織の協業プロセスを強化し、戦略や戦術面で生産性向上を支援する方法論であり役割です。信頼できるデータにもとづいた一貫性のある活動をレベニュー組織が実践することによって、顧客の信頼を得てビジネス成長を加速させることができます。

 顧客のニーズをくみ取り、最適なソリューションや価値を提案し、顧客の成功を支援するレベニュー組織は、ソフトウェア業界で生まれた組織モデルを参考にしながら、ここ20年ほどで大きく変化が見られた部門といえます。

持続的なビジネス成長を実現するレベニュープロセス構築

 モノづくりの世界では、高い品質の製品を最大限のスループット(生産効率)で生産するために、プロセスを厳格に管理し、非常に細やかなマネジメントと分析が実施されています。生産の無駄を排除し、効率を最大化することを目指すトヨタ生産方式(TPS)のジャストインタイムや自働化といった概念は日本で生まれ、後に「リーン生産方式」として欧米で広まりました。

 そして欧米のビジネススクールで研究が進められ、体系化された学問となり、IT業界やマーケティングにも応用されました。つまり、日本の製造業に端を発する学問が営業とマーケティングの世界に転用されています。それがCRM/SFAやMAを活用した生産性向上です。

 スーパースターのような優秀な営業1人のインパクトは組織全体で見ると限定的で、採用も容易ではありません。その営業のノウハウによって組織全体の生産性を3倍にすることは、難易度が高く時間を要します。システムでアプローチに一貫性と再現性を持たせ、自動化することで組織全体のパフォーマンスを持続的に維持しビジネス成長を実現できます。システムとは、共通の目標を達成するために一体となって動くものの組み合わせです。レベニュー組織は今、ビジネス成長を科学し、再現可能な成功プロセスを構築する必要性に迫られています。

 テクノロジーの進化に加えて2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、リモートワークやオンライン商談に迅速に適応する必要性に迫られ、レベニュー組織は劇的なスピードで変化を遂げました。ツールやプラットフォームの導入により、顧客データの収集と分析が飛躍的に向上し、より効果的なマーケティングと営業戦略が可能になりました。変化のスピードが速い不確実な時代においては、テクノロジーを含めた投資の収益効果の証明が求められています。

RevOpsの4つの役割

 RevOpsは、プロセス、データ、テクノロジーの統合によって組織連携を強化し、GTM戦略の実現や顧客体験を向上できるオペレーションモデルを構築します。レベニュー組織のサイロ化を取り除き、レベニュープロセス全体を通してデータを可視化することで、健全なプロセス改善や収益成長を促します。

 RevOpsを構成する役割は大きく分けてオペレーションマネジメント、レベニューイネーブルメント、RevTechマネジメント、データマネジメント・インサイトの4つがあります(図1)。RevOpsがもたらす価値の理解を深めることを目的にまずは概要を紹介します。

図1 RevOpsの構成要素
図1 RevOpsの構成要素

オペレーションマネジメント

 オペレーションマネジメントは、レベニュープロセスの最適化と効率化を実現します。プロセス設計・標準化によって、レベニュー組織の業務効率を向上させ、人材・時間・コストなどを効率的に配分し、最大の効果を発揮できるように支援します。KPI目標を設定し定期的に評価やフィードバックをして、リソースやパフォーマンスを管理・改善します。

レベニューイネーブルメント

 レベニューイネーブルメントは、収益向上のためにフィールド組織の能力を最大限に引き出します。GTM戦略やレベニュープロセスを踏まえて、レベニュー組織の各フィールド部門がシームレスに連携し顧客に価値提供できるように、トレーニングプログラムの開発、コーチング、コンテンツの提供・整備、テクノロジーの導入や利活用促進、インセンティブの設計などのトレーニングや育成全般を担います。

 また、フィールド組織が顧客とのコミュニケーションで活用できるコンテンツをGTM戦略と連動した形で作成・整備することで、一貫したメッセージで顧客に価値提供できます。フィールド組織が高い生産性で業務を遂行するための最適なテクノロジーの導入や活用支援、戦略上重要な活動に焦点を当てて行動できるようなインセンティブ設計をCRO(チーフレベニューオフィサー、最高レベニュー責任者)やファイナンス部門と連携して実施します。

RevTechマネジメント

 RevTechマネジメントは、フィールド組織が効果的に連携し、データを活用するためのテクノロジーの導入、統合、維持管理を担います。テクノロジーの導入においては、GTM戦略の実現に向けて効果的なテクノロジーを選定し、そのテクノロジーの能力を最大限発揮できるように構築やワークフローの自動化、他システムとの統合をします。自動化に適した領域や、新技術の活用領域を特定し、より効率的で合理的なオペレーションに進化させることも期待されています。

データマネジメント・インサイト

 データマネジメント・インサイトは、CROやフィールド組織にビジネス判断をサポートする情報を収集し提供します。各部門や顧客から収集したデータを整理し一元的に管理し、定量的な分析と定性的な分析の両方を行い、トレンドやパターンを見つけ出します。分析結果をレポートとしてまとめ、各関係者に戦略や施策を提案し、データにもとづく意思決定を促します。

収益最大化において重要性を増すCROの役割

 企業の収益を最大化するために設計された部門やチームの集合体であるレベニュー組織において、これらを統括するCROの役割の重要性はますます高まっています。

 ただし、CROは新しい役職ではなく、2012年にフォーブスが「CEOの新たな秘密兵器」と位置づけて以降、成長中の役職です。RevOpsはレベニュー組織を支えるオペレーション部門であり、CROは図2のようにRevOpsチームを含めてレベニュー組織(マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなど)全体を統括し、収益成長を推進する責任を持ちます。マッキンゼーによるとCROのような役割を持つFORTUNE100の企業は、同業他社よりも1.8倍高い収益成長率を示しているといわれています。

図2 レベニュー組織でのRevOpsの位置づけ
図2 レベニュー組織でのRevOpsの位置づけ

収益成長の要となるCRO

 ここまで述べてきた通り、現代のビジネス環境は、急速なテクノロジーの進化、顧客ニーズの多様化、競争の激化などにより、非常に複雑化しています。こうした中で、企業が持続的に成長するためには、収益に直結する戦略の一貫性と実行力が求められます。

 従来、収益に関する業務は営業部門に一任されることが多かったのですが、マーケティングやカスタマーサクセスも大きな影響をおよぼすようになっています。特に欧米ではSaaS企業が成長をする過程で、カスタマーサクセスの組織が拡大していきました。新規顧客獲得の営業の動きと、既存顧客の契約を更新するためのカスタマーサクセスの動きで方針が異なり、対立構造が起きてしまうことがあります。顧客にとってもシームレスな顧客体験を得られないことになってしまうでしょう。

 CROの設置は、レベニュー組織のサイロ化や対立構造を排除して統合し、企業全体としてのレベニュー戦略を統一するために不可欠です。成長のための総合的な戦略をCRO主導で立案し、実行に移す責任を担い、部門間のシナジーを最大化します。なお、必ずしもCROという名称ではなくチーフグロースオフィサーなど企業によって名称は異なりますが、本書ではレベニュー組織全体を統括する立場を示す表現としてCROと記載します。

CROの仕事とは何か

 CROの役割は多岐にわたりますが主に次のような役割を担います。

収益成長の戦略立案

 CROの最も重要な責務の1つは、GTM戦略を含む収益成長のための戦略を立案することです。これには、市場分析、競合分析、顧客ニーズの理解などが含まれます。

 これらの情報をもとにして、短期的および長期的な収益目標を設定し、それを達成するための具体的なアクションプランを策定します。この戦略立案には、データドリブンなアプローチが求められ、データ分析の結果をもとにして柔軟に戦略を修正することも含まれます。それを踏まえてレベニュー組織は顧客のライフサイクル全体を管理し、顧客満足度を高めるための戦術設計や施策実行につなげていくことになります。

顧客ライフサイクルの統合管理

 CROは、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門を統括し、リード獲得から営業の受注、受注後の顧客満足度の向上と継続まで顧客のライフサイクル全体をマネジメントし、収益を最大化します。マーケティングと営業の連携というのは「言うは易く行うは難し」です。従来の部門別プロセスは統合に対して抵抗も多いため、そのギャップを埋めるための役割も担います。

 それぞれの部門が独立して活動するのではなく、共通の目標に向かって協力し合うことで、シナジー効果を生み出し、収益を最大化できます。具体的には、リードのフォローアップを迅速かつ効果的にすることでリードから契約への転換率の向上を実現したり、マーケティングキャンペーンのROIを明確にすることでより効果的なマーケティング戦略を立案したりできます。各部門がデータにもとづいた戦略を立案し実行することで、取り組みの効果が明確になり、収益最大化が実現できるのです。

フォーキャスト(業績予測)と目標設定

 過去のデータや市場の動向をもとにして、将来の収益や受注を予測し、現実的かつ挑戦的な目標を設定します。これには、マーケティングキャンペーンの効果測定、営業のパイプラインマネジメント、カスタマーサクセスの指標分析などが含まれます。

 正確なフォーキャストを行うことで、企業全体のリソース配分や投資判断が適切に行えるようになり、収益性の向上に寄与します。第8章のインタビューでも営業パフォーマンス管理ソリューションのリーダー企業であるXactly(エグザクトリー)のCEO アーナブ・ミシュラ氏は、フォーキャストはビジネスの健全性を把握するのに最も重要なことの1つだと話しています。

CROとは営業責任者なのか

 「CROという役職を掲げていても実態は営業責任者だ」ということは、日本国内に限らずよくあることです。また、CROを営業組織の長のことを示す新たな名称だと捉えている人もいるかもしれません。

 しかし、CROと営業責任者との間には明確な違いがあります。営業責任者の管理する領域である営業部門は通常、新規顧客獲得や売上の受注目標達成に焦点を当て、半期や年度ごとの目標など比較的短期的な目標に向けて活動します。一方、CROは企業全体の収益を最大化する責任を負い、より中期的視点を持って市場の動向や長期的な目標を達成するためにやるべきことを念頭に置きます。

 そして営業だけではなく、マーケティングやカスタマーサクセスなど、企業の収益に影響を与えるすべての部門を統括します。新規顧客獲得や維持・拡大、そして継続利用の促進もその活動範囲です。CROの視点は、単なる売上の増加だけでなく、企業全体の収益性と成長戦略に関連したものであり、顧客体験の向上やLTV(顧客生涯価値)の向上のための仕組みの構築など収益を生み出すすべての要素に関連しています

 日本の伝統的な組織体制では、いわゆるカスタマーサクセスの役割を営業組織が担っているケースも多いため、「マーケティングを含むレベニュープロセスのすべてを管理する範囲とし、中長期視点で企業価値向上に向けた収益性向上に責任を持つ」と捉えるとわかりやすいかもしれません。

CROが組織に与える影響

 CROは部門間の連携を強化し、顧客体験を向上させることで、直接的に収益に貢献できます。CROが組織全体に与える主な影響は、次の3つです。

1 他部門との連携強化

 CROはマーケティング、営業、カスタマーサクセス部門の統合に加え、収益に責任を持ち持続的な成長という企業の統一目標に向けて、パートナー部門、製品部門、ファイナンス部門とも密に連携します。このような部門間の連携が強化されることで、戦略や新たな収益成長の機会について情報の共有が行われ意思決定のスピードが向上し、結果として組織全体の効率が上がるのです。有機的な成長には一貫した、収益性のある、スケーラブルな成長に向けて組織全体で一枚岩になって取り組む必要があり、その強化の役割を果たします。

2 顧客体験の向上

 CROのリーダーシップのもと、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門が連携して一貫性あるコミュニケーションを実現することで、顧客体験が大幅に向上します。顧客体験の向上は、顧客の満足度とロイヤルティを高めることにつながります。

 例えば、顧客が最初に接触するマーケティングキャンペーンから、営業との交渉、そしてカスタマーサクセスによるアフターケアに至るまで、一貫した高品質のサービスを提供することを可能にします。これにより、顧客は企業に対して信頼感を抱き、再購入や他の顧客への推薦といったポジティブな行動をとるようになるでしょう。一貫性を持ってレベニュー組織がコラボレーションすることにより顧客体験を向上し、さらには収益の増加とブランドの強化にも直結します。

3 収益成長

 CROがもたらす最大の効果は、収益に対する直接的な影響とその成果です。データドリブンなアプローチを採用し、パフォーマンス改善のサイクルを高め、高いフォーキャスト精度を維持することによって、投資の意思決定スピードを引き上げることが可能です。レベニュープロセス全体について、レベニュー組織の人員配置、投資、インフラの財務適正化に対する完全な説明責任を持つことは、組織の拡大においては基本です。部門間のシナジー効果を引き出すことで、コストの削減や売上の増加を実現します。

 このように、CROは事業の成功と持続可能な成長を支える中核的な役割を果たします。

CROと経営陣の合意形成

 CROの役割を効果的に果たすためには、他の経営陣、特にCFO(最高財務責任者)との緊密な連携と合意形成は不可欠です。CFOは財務報告、CROは収益創出に責任を持ちます。時には、CROは成長のために必要なリソースを主張し、CFOの予算に関する考えと衝突することもあります。CROは業績目標、CFOはP/Lというそれぞれ大きなプレッシャーがあり、この連携が軟弱である場合にはビジネスにマイナスの影響が出てしまうでしょう。

 著者も外資系IT企業の営業部長として日本法人のファイナンスの責任者とは度々意見が食い違い合意形成をとれない経験がありました。結果的には営業組織がより成果を出すために何が必要かに賛同を得て方向性やルールを変更することにつながりましたが、双方の視点やそれぞれの言語で会話を進めても建設的な議論とすることは難しいと身をもって理解した経験でした。

 CFOを含む経営陣は、最小限のリソースで大きな成長と利益率を実現したいと考えています。特に成長中の企業ではマーケティングや営業はコストのかかる領域です。CROは業績を向上させるためにどれだけのリソースが必要か、新しい顧客を開拓するためにどれだけ投資が必要かを主張しますが、CFOと常に意見が一致するわけではありません。CROにとっては極めて重要な顧客データもCFOの財務的価値観では重要度が低い可能性はあります。データは重要な戦略的資産でありながら、会計上の責任はないからです。

 オペレーションモデル(組織、プロセス、データ)のサイロ化を許容すると、CROは効果的な解決策を見出すことが難しくなります。そして無駄に重複する投資の発生や分断されたテクノロジーによって正しいデータをタイムリーに取得できないため、CROの主張でCFOを説得するのはさらに困難になります。

 真に対等かつ透明性のあるパートナーとして経営陣との合意形成を図ることが重要です。そのためには、企業全体のビジョンと目標を共有し、それにもとづいた収益戦略を策定することに加えて、進捗や課題を共通言語で会話できるコミュニケーション計画が不可欠です。それによって迅速な意思決定と問題解決が可能になります。

 売上・利益に関するデータや戦略を全経営陣と透明性をもって共有していれば、分断された個別のデータではなく、全員が1つの情報をもとに判断をすることができるようになるでしょう。部門横断的にシナジー効果を発揮できるので、CROが収益成長を推進するための中心的な役割を担え、持続的な成長と競争優位性を確保できます。

CROの戦略的パートナーであるRevOps

 レベニュー組織の各部門間の連携強化を図り、収益の成長戦略を実行していくうえで、CROとRevOpsは強いパートナー関係にあります。多くのスキルが求められ、短期的な成果と持続的な成長のプレッシャーの中にいるCROにとって、RevOpsは不可欠な存在です。特に現在のようなビジネス環境では、競争が激しく、オペレーションモデルの効率性と有効性を確保することは、優位性を維持するために重要です。

 ただし、市場が複雑化する中、従来のような個別のオペレーション機能を管理する方法では、サイロ化したデータでの誤った判断や一貫性のないアプローチがしばしば発生します。言い換えれば、レベニューサイクルがバラバラのプロセス、方針、手順、テクノロジーで構成されている場合、優れた顧客体験を提供することは不可能であるということです。

 切り離された組織モデルは企業の成長を遅らせ、俊敏性を低下させ、最終的に競争優位性を損なわせてしまいます。つまり、変革するための強い権限、明確な範囲、測定可能なKPI、現場での実行を推進する強固なRevOpsというパートナーなしに、単にCROの肩書だけでは収益最大化は実現できないのです。

真の意味でのデータドリブンな意思決定

 CROが掲げるビジョンや目標に対して実現する戦略策定の支援をRevOpsは実施します。データを用いてボトルネックや解決策の仮説を含むインサイトの提示、KPIとパフォーマンス指標の統一などレベニュー組織のすべての部門が共通の目標に向かって努力し、収益の最大化に向けてコラボレーションを実現します。

 効果的な意思決定は、その意思決定に役立つデータがあってこそ実現できます。RevOpsが有機的に機能していることによって、部門間のデータを統合や顧客ライフサイクルの包括的なビューを提供し、より多くの情報にもとづいた戦略的な意思決定を可能にします。CROが目にするデータは分断されたものではなく、正確かつよりリアルタイムなものです。

 サイロ化されたオペレーションモデルの場合、レベニュー組織の各部門から個別に報告されるデータから、何が真実かわからないという状況に陥りがちです。断片的なデータ活用はリソースの浪費につながります。

 具体的には、マーケティングからは「MQLは好調だが営業が商談をクローズできていない」、営業からは「マーケティングから最適なリードが供給されないため有効な商談創出の活動を効率的に実施できていない」、カスタマーサクセスからは「営業がターゲット外の顧客に無理な販売を実施していることによって継続率の維持が困難である」など、それぞれがそれぞれのデータを用いて会話している状況は、データがあるように見えて、判断ができるものではない意味のないデータ活用ということです。

 一元管理された適切なデータ活用であれば、CROは最適なタイミングで適切な意思決定を実現できます

効率化とコスト削減

 RevOpsはレベニュープロセス全体を見渡し、リソースの最適配置の余地を提示します。人的リソースやテクノロジーやデータ管理など、部門横断で最適化することにより、重複するライセンスコストなどの無駄な費用を削減し、リソースを最も効果的な領域に集中させることが可能です。これにより、全体的なコストが最適化されます。

 さらに、データとプロセスの最適化、およびテクノロジー活用による自動化により、マーケティング活動、営業活動、カスタマーサクセス活動がより効果的に行われるようになります。マーケティングと営業、営業とカスタマーサクセスがそれぞれ重複した取り組みを実施したり、営業が付加価値の低い活動に時間を費やしたりすることがなくなります。

 これらにより、CAC(顧客獲得コスト)の削減や、フォーキャスト精度の向上、LTVの向上が期待できます。

 レベニュー組織には、単に短期的に売上を上げるだけでなく、持続的な成長を達成し、競争力を維持するための戦略と実行力が求められています。明確なビジョンと戦略を持ち、組織全体が共通する長期的な目標や方向性を認識し、各部門が同じ方向へ一致団結して尽力するためにもCROとそのパートナーとしてのRevOpsの役割は大きいものです。

レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識

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レベニューオペレーション(RevOps)の教科書
部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識

著者:川上エリカ、丸井達郎、廣崎依久
発売日:2024年9月25日(水)
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)

本書について

本書ではRevOpsの役割や体制づくりから、人材確保の方法、収益管理に最適なツールの選定、意思決定を助けるレベニュープロセスの構築とフォーキャスト(業績予測)の精度の高め方、イネーブルメント、RevOpsでのAI活用法まで解説します。

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