Agentforceの活用でROI 200%超えも Data Cloudの具体的価値
現在Data Cloudは、従量課金モデルを採用しており、Agentforceも同様の料金体系を採用する予定だ。追加費用がどの程度になるのか、ハースト氏は「コストについて顧客と話す際には、全体的な体験を考慮に入れています」と述べるにとどまったが、成果に結びついている事例を紹介してくれた。
大学向けの教科書などを販売している大手出版社Wiley Publishingは、学生がキャンパスに戻ってくる、夏季休暇明けにカスタマーサポートの需要が大幅に増加するという課題を抱えていたという。臨時雇用による人件費の負担が大きかったところ、Agentforceを活用することで40%以上のケース解決率向上、ROI 200%以上という成果をあげている。
こうした成果が期待される中、特に米国では、AIが職を奪うことを懸念するような声も聞こえてくるだろう。しかしながら、本当に必要な企業活動に十分に集中できていない現状があり、それを打開するものがAgentforceだとハースト氏。「私たちは、人間とAIが協力して働けることを大切にしています」と話す。
また、Data Cloudに話を戻すと、Dreamforceでは「Zero Copy Partner Network」(以下、Zero Copy)も目玉の新機能として取り上げられていた。これは、Data Cloudと安全に双方向でデータのコピーや移動を行わず、データを利用するためのパートナーエコシステムだ。この取り組みにはAmazon Web Services(AWS)、Databricks、Google Cloud、Snowflake、Microsoftといった主要企業が参画している。では、データの統合が容易になる中、企業のセキュリティ要件はどのように満たされるのだろうか。
ハースト氏は、Zero Copyとあわせてガバナンスとセキュリティに関する多くの機能をリリースしていると説明。たとえば、データソースごとに同一、または異なるセキュリティ要件を設定することが可能だという。
顧客ニーズを反映した「使いやすさ」の追求、拡張性への挑戦
Salesforce Platformとの統合を推し進めてきたData Cloudは、今後どのように発展していくのか。今ハースト氏が注力しているのは、1秒未満でデータを取り込み、パーソナライゼーションエンジンへのアクティベーションを可能にする、リアルタイムなデータ処理エンジンの開発だ。
また、異なる地域や組織でSalesforceを利用している企業において、Data Cloudの機能をSalesforceインスタンス全体にノーコードで拡張できる「Data Cloud One」にも力を入れているという。今後はコネクターの拡充にも注力し、顧客が独自の暗号化キーやLLMを導入できるような開発を行っていく方針だ。
加えて、機能面だけでなく「使いやすさ」にも配慮し、顧客アドバイザリーボードやパートナーアドバイザリーボードを通じた対話を続け、継続的なUI/UXの改善を図っているという。たとえば、2025年に導入予定の「Singularity」と呼ばれている機能は、Salesforceを利用しているすべての組織に対して、Data Cloudを通じて自動的に設定を一括反映できる仕組みだ。これまでのように組織ごとに個別機能を設定したりせずに、必要なものだけを容易に有効化・管理できるようになる。
「Data Cloudは、Salesforce Platformに深く統合されていき、ネイティブ機能として進化していきます」とハースト氏。「20年以上在籍してきた中で、今が最もわくわくしています。この2年間で、通常なら10年かかるような新機能やイノベーションを次々とリリースできたからです」と述べ、将来への期待を語った。