クラウドの浸透がもたらす光と影とは?
前回・前々回においては、クラウドサービスの利用に伴う代表的な懸念事項を見た。主としてデータがサーバサイドに保存されていることに伴う懸念であり、具体的には「情報はきちんと保存されているのか」「使いたいときに使える状態になっているのか」「消去した情報は本当に再生不能になっているのだろうか」などといった点が相当した。
また、先進的な問題事象としては、クラウドが有する豊富な計算機資源を悪用するケースなどを指摘する事例もある。具体的には、クラウドの時間貸し計算機資源を、パスワード解読に活用するようなケースである。ラックサイバーリスク総合研究所の調査によれば、大規模クラウドサービス提供事業者のサービスを介した攻撃量に増加傾向が見られるという。
本稿では、クラウドサービスの進展に伴い、中長期的に想定される懸念を推察する。ここでは、現在黎明期にあるクラウドサービスの利用が、今後順調に拡大することを前提とする。クラウドサービスであるがゆえにセキュリティ上の課題が解決される事例ももちろん存在するが、本稿では懸念点・問題事象として想定されるものを2例紹介する。
ひとつは、「持ち込み通信」とクラウドサービスの活用による悪用・情報詐取についてであり、いまひとつは、クラウド側への情報の吸い上げ・蓄積に伴うプライバシ問題についてである。