MS、SAP、ServiceNowとマルチエージェントによるアライアンス
AEPというテクノロジースタックを共有することで、複数のエージェントの協働も可能になる。AEP Agent Orchestrator の2つ目の要素「マルチエージェントコラボレーション」は、アドビのAIエージェント同士の連携はもちろん、他社のAIエージェントとの連携を視野に入れている。ビジネス活動はマーケティングだけでは完結しない。基調講演で、チャクラヴァーシー氏は「アドビはAIエージェント同士の相互運用性にコミットする」と述べ、AIエージェントのエコシステムの拡充と共に、アドビのエージェントとサードパーティーエージェントとの連携に力を入れていく考えを明らかにしていた。
すでに、主要ソフトウェアベンダーは、それぞれが自社の製品ポートフォリオをAIエージェントで強化する方向性を明らかにしている。アドビはマーケティングから他の業務ドメインへと横断するユースケースでも、シームレスに実行できるAIエージェント提供にパートナーと共に取り組む。その代表例が、Microsoftと共同でのAdobe Marketing Agent for Microsoft 365 Copilotである。これはWord、PowerPoint、Teamsから、Adobeアプリケーション内のコンテンツ、データ、ジャーニーをマーケターが操作できるようにするものだ。
また、SAPとも、SAP Business Suiteのデータにアクセスし、新しいインサイトを得られるようにする取り組みを進めている。例えば、キャンペーンROIを算出しようと考えたマーケターがAdobe Data Insights Agentに依頼する。このAIエージェントはSAPの財務データにアクセスし、アドビのキャンペーンデータと組み合わせてマーケティングROIを示すようなことが可能になる。さらに、ServiceNowとは、顧客体験のパーソナライゼーションをより大規模に展開できるよう、アドビのAIエージェントとNow Assistとの統合に取り組んでいる。

この他、コンサルティングファーム、SIer、デジタルエージェンシーなど、多くのパートナーとの協業が進行中だ。Accenture、Deloitte、Ernst & Youngなどのパートナーに求めるものは、これまでのテクノロジー実装で蓄積してきた経験と、業界別の深い専門知識だという。その知識を利用し、その企業独自のAIエージェント構築をサポートする狙いがある。具体例として、パルサ氏が挙げたのがFedExとの取り組みだ。世界的な物流会社として知られるFedExが持つサプライチェーンのデータとアドビの顧客体験のデータ、その両方にアクセスできれば、新しいビジネス機会が生まれる。その実現に向けて、FedExのサプライチェーンのAIエージェントとアドビのAIエージェントが協働できる仕組みの整備が進んでいる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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