いい意味で期待を裏切るLab版5.6
4月に米国で行われた「MySQL Conference & Expo 2011」では、いち早くLab版のMySQL 5.6の情報が発表された。Lab版はいわゆるβ版に位置づけられるもので、これがそのまま製品版になるとは限らないが、事前に市場で評価してもらうことで製品の質を向上させる目的で提供される。5.5の提供開始から4ヶ月程度しか経っていないことを考えるとかなり早いタイミングであり、これもOracleとの融合効果の1つと言えるだろう。
5.6で強化されている機能は、Optimizerの改善、Partitioning機能の拡張、InnoDBとの親和性を高めることでの性能向上などが挙げられる。「レプリケーションもホットな話題の1つですが、本体機能ではない部分で注目を集めているのがMemcached APIです」と梶山氏。
Memcached Pluginを追加することで、1つのInnoDBエンジンにSQLでもMemcached APIでも並行してアクセスできる機能だ。これにより、リレーショナルとNoSQLの利点双方を活かした形でMySQLが活用できることになり、市場から大きく注目されている。
また、MySQL Clusterも7.2の提供がLab版として始まっている。7.1までは多くのjoinが発生する場合には性能が出なかったが、7.2ではそれが大きく改善されているとのこと。Lab版については、「とにかくダウンロードして是非多くの人に評価して欲しい」と梶山氏は言う。
また、Oracle VM Templateの提供、Oracle Fusion Middlewareの正式サポート、既存管理ツールのOracle Enterprise Managerとの融合など、さらなるOracle製品群との親和性、連携の強化がなされつつあり、今後もこの方向での進化は加速しそうだ。製品サポート体制もOracle製品のサポート体制と一体化され、より手厚いサポートサービスが提供できるようになったとのこと。企業ユースを視野に入れたときには、これらの進化はおおいに歓迎されるのではないだろうか。
* * *
すっかり定番の挨拶と化した「My SQLって今、どうなの?」―今回のセミナーを通じ、製品の品質向上などOracleに買収されたメリットが、新たなMySQLでは発揮されつつあることを感じた。
もちろん、すぐにユーザーやコミュニティが、Oracleのやり方すべてを受け入れることにはならないだろう。製品の進化と共に、既存のユーザーやコミュニティとの関係をよりよいものにしていくためには、さらなる積極的な情報提供、そして彼らの声に耳を傾ける謙虚な態度が必要になるだろう。