新たな社会インフラを阻む、法令規制の撤廃を目指す
― 将来的な社会のあり方を考えることは重要なことですが、同時にまだまだ被災地には復旧・復興のための大きな支援が必要とされています。原口先生のお立場から、直近の地域再生、産業再生をどのように支援していかれるのでしょうか。また、将来を見据えての具体的な取り組みをご紹介ください。
まず、直近の現地復興において私たちの役割として最も重要なことは、「マッチング」だと考えています。震災直後から被災者支援に多くの手が挙がっていたにも関わらず、なかなか支援を必要としている人に届きませんでした。これまでのコーディネート機能は自治体が担っていましたが、それすら被災して麻痺してしまったわけです。そこで「日本維新の会」や「インターネット事務局」がSNSなどを使用して呼びかけたところ、両者から手が挙がり、瞬時にマッチングが可能になりました。その結果、医療サービスや液体ミルクなど様々な支援が必要としている人の手に渡っていったのです。今後、ニーズはどんどん変化し、支援側もそれに合わせた対応が求められます。そこに政府とICTの力が大いに発揮できるように思っています。
もちろん、これらはいわば対症療法的な支援の一例です。将来を見据えた分権社会を構築するためには、スマートグリッドや光の道の実現が早急に求められます。しかし現在策定されている「光の道三法」には、法規制の視点が欠けています。現在の法規制では、がんじがらめで、例えばコンテナ型の可動式のサーバーを置きたくても、建築基準法でデータセンターは基礎を作らなくてはならない。こうした法律とのミスマッチをまとめて整理し、場合によって法律そのものを見直していく必要があります。これらは各省庁を説き伏せる必要があります。幸い総務委員長の任にありますから、政府案に法律を足して規制改革を推進していきたいと考えています。これほど巨大な経済を持つ国で、これほど不自由で不合理な規制があるのはおかしいこと。もはや唯々諾々と受け入れている場合ではないのです。
危機を脱出するためには、国民を信じて情報開示から
― 最後に危機管理や危機におけるリーダーシップのあり方についてお聞かせください。
危機管理の基本は「ミニマックス」です。すなわち想定される最悪の事態を極小化すること。そのために必要なこととして、師である松下幸之助氏は「周知を集めろ」と常におっしゃっていました。同時に「正しい情報の開示」が必要とも。それはすなわち「民とともにある」ことを意味します。例えば、原発がメルトダウンを起こしていたと知っていたなら知らせる。それを「パニックを起こすから」などと隠蔽すれば国民はどうなるでしょう?「何かを隠しているのではないか」「誰かが得をしているのではないか」と疑心暗鬼になり、ますます事態を悪化させかねません。民主主義のリーダーシップは、常に国民を信頼することからはじまるのです。
私はいろいろな経験をするなかで、折に触れ「統帥要綱」に書かれていたことを思い出していました。軍国主義は真っ向から否定しますが、ここには私たちが学ぶべきことが多数書かれています。どんな危機にあってもうろたえず、希望を捨てず、真実と向き合い、困難を乗り切っていく。しかし、それは生来持つものでもなく、有事に突然発揮されるものでもありません。そうした意識を常に持ち、想定の中で日々訓練し、危機管理の意識を体得することが、リーダーには求められているのだと思います。
原口 一博(はらぐち・かずひろ)氏
民主党衆議院議員、衆議院総務委員長 1959年佐賀県佐賀市生まれ。83年、東京大学心理学科(第4類心理学)卒業。同年、財団法人・松下政経塾入塾(4期生)。87年、佐賀県議会議員当選(2期)。 96年衆議院議員(佐賀県第1区)に初当選、現在5期目。衆議院予算委員会委員、郵政民営化に関する特別委員会理事、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、民主党ネクストキャビネット総務大臣、市民政策議員懇談会事務局長、東京女子医大医療事故被害者支援チーム事務局長、佐賀県連代表を経て総務大臣。現在、衆議院総務委員長。著書に『平和』(ゴマブックス)、『地域主権改革宣言』『ICT 原口ビジョン』(共にぎょうせい)など多数。