アプライアンス製品、顧客との接点がキーワードに
一方で、データベース市場拡大につながるプラスの面もある。
「リーマンショックによる影響は、すべての企業が平等に足を引っ張られ、市場全体が落ち込みました。これに対し、今回の震災では企業ごとに影響が異なります」(赤城氏)
実際、クラウド関連のサービスは、震災後市場拡大が加速している。そして、クラウドやアプライアンスのように、提供される段階でワークロードが事前最適化されている製品、サービスには、企業からも注目が集まっている。さらに、災害対策やBCPへの関心の高まりも、これまで以上なのは前述の通りだ。
震災の影響については「IT市場でみんなが平均して悪くなることはなさそうです」とのこと。8.5%という大きなマイナス傾向の中にあっても、2%から3%程度ビジネスを伸ばせるベンダーも出てくるかもしれないと赤城氏は指摘する。逆にその中で大きくマイナスで推移するようなベンダーは、翌年以降さらに厳しい状況になりかねない。
1つのポイントは、システムの統合、集約をしたいという顧客の要求に対し、どのように対応できるかだ。米国では10から20のシステムを統合するのがごく当たり前になりつつあるが、日本ではそれが4つか5つのシステム統合に止まっている。現実的な20なりのシステム統合提案をできるかが、今後のポイントになるのではと赤城氏は見ている。これはベンダー側がそういったソリューションを提供するのはもちろん、SI企業がどのベンダーを担いで顧客に提案するかも大きな要素となるだろう。
提案の中に、前述した事前最適化された製品やサービス、つまり流行のアプライアンス製品やMicrosoftのSQL Server Fast Track Data Warehouseのように事前検証されたシステムの組合せをどのように組み込んでいくのか。そのあたりが、SI企業の力量でもあり、他社に対する優位性になるはずだ。そのため、ベンダーとSI企業との関係性は、今後のビジネス拡大のためには重要性がさらに増しそうだ。
また、データベースが対象となる領域にも変化が出てくる。これまでは、当然ながら人事や会計など企業の基幹系業務領域が主役だった。それが、より直接的な顧客との接点にシフトしてくる可能性が高い。「不動産の企業が大量のデータを抱えているであるとか、企業が顧客と接するサービス部分でデータ活用の需要が増える傾向が見て取れます。つまり、CRM的な部分でのデータ活用はより拡大する可能性があり、それをどう獲得するかが鍵となりそうです」と赤城氏。「たとえば、楽天のような企業を小売業と見るのか、インターネット系の新たなサービス業と見るのかの違いがあり、インターネット系のサービス業であれば企業規模に関わらず、顧客向けサービスへのIT投資が今後もさらに拡大すると考えられます」とのことだ。