新規事業開発、起業の科学的アプローチ手法「顧客開発モデル」を、書籍『アントレプレナーの教科書』、『スタートアップ・マニュアル』の訳者でベンチャー・キャピタリストの堤孝志氏、飯野将人を基調講演の講師に迎え解説。
パネルディスカッションのモデレータには、リーン・スタートアップ・ジャパン代表の和波俊久氏を迎え、成功するビジネススタートアップの秘訣をディスカッション致します。
■会期:11月20日(火)18:00-21:00 (17:30-開場)
■場所:デジタルハリウッド東京本校1Fホール(東京・御茶ノ水)
■参加費:無料(事前申込・抽選制) ■定員:150名
■詳細・お申込は、こちら!
「ニーズが発生するメカニズム」を探るエスノグラフィによるアプローチ
— 前回のお話では、顧客インタビューを中心に「ニーズが発生するメカニズム」を探る方法をお話いただきましたが、その他の方法などございますか?
堤氏:Yes or No式のインタビューや記入式などのアンケートなどでは、「ニーズが発生するメカニズム」までは掴むことが出来ません。基本的には対面で聞くことが非常に重要です。
究極的には、お客さんになりきることが必要です。観察対象の生活領域に入り込んで、お客の立場になりきってみる。「“切実”なニーズが発生するメカニズム」を、本当に根深い構造として捉え観察していく。デザイン思考などでいう、エスノグラフィと同様です。
お客の立場になりきってみる、すなわち顧客を徹底的に理解することの重要性が分かっている企業は、「顧客開発モデル」や「エスノグラフィ」といった言葉を知らなくてもそれを実践しているものです。
私が直近で話を聞いた医療・福祉の領域でサービスを提供して成功している新興企業もそうでした。
彼らは元々医療・介護の領域では素人でしたが、少子高齢化社会の到来で今後のその分野は伸びるだろうと考え、全く経験のない分野ながらも、そのフィールドでのビジネス展開にこだわりました。
でも、自分たちが医療・介護というフィールドの中で、何をすればいいのか見えない時期がありました。そこで彼らは何をしたかというと、病院や老人ホームで実際に住み込みもして働きながら、そこで働く人々が何をしているのか、どんなことが日々起きているのかを、朝から晩までつぶさに観察したのです。
その観察の中で「医療・介護というのは大変に重労働で離職率が高い」という業界共通の“切実な課題”に気づき、それを解決するサービスを提供することで事業機会を捉えたのです。
「顧客発見」の究極の世界というのは、まさにこの観察のことです。従来のアンケートでは分かり得ないこのような世界まで入り込んで、ニーズのメカニズムを探っていくことを「顧客に聞く」と言っており、『アントレプレナーの教科書』、『スタートアップ・マニュアル』では、それが詳しく書いてあります。