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Zipcarにみる“サービスデザインの極意”とは? (前編)

(第2回) 


前回の連載では、サービスデザインの考え方とサービスデザインの構成要素として、三つの層をご紹介しました。今回は、サービスデザインの考え方をより具体的に理解していただくために、象徴的な事例としてアメリカのカーシェアサービスである「Zipcar」の取り組みを2回に分けて解説します。

カーシェアサービス企業「Zipcar」の成り立ち、サービス/ビジネス・コンセプト

1.カーシェアサービス企業「Zipcar」の成り立ち

 Zipcarは2000年に、Antje DanielsonとRobin Chaseという二人の女性によって創業されたカーシェアのサービスです。アメリカだけではなく、カナダ、イギリス、スペイン、オーストラリアでもサービスを行なっており、1万1千台の車両と76万人のメンバーを擁していているカーシェアサービスの中では草分け的な存在です。

写真1:駐車場に配置されたZipcar

 創業当時は、創業の地であるボストンをはじめ、東海岸を中心に事業展開していましたが、近年ではサービス拠点は全米に広がっています。私自身も、シカゴに住んでいた際、何度もサービスを利用し、そのユーザー中心の経験に感銘を受けました。

 ここでZipcarを象徴的な事例として取り上げることには理由があります。

  1. ユーザー中心思考によって、ユーザーに快適かつ喜びのある経験デザインが行われている点
  2. 複合的なタッチポイントが相互補完的にデザインされ、ユーザー経験を形作っている点
  3. ビジネスモデルやブランディングの観点からも、よくデザインされている点

 上記3つのポイントが、サービスデザインがテーマの本連載で扱う理由です。

2.Zipcarのサービス/ビジネス・コンセプト

 Zipcarのビジネス・コンセプトは、日本でも普及しつつあるカーシェアのビジネスモデルと同様です。カーシェアを標榜していますが、クルマを所有、提供するのは事業者であるZipcarであり、ビジネスモデルとしてはレンタカービジネスの派生系だと言えます。

 レンタカーと大きく異なるのは、クルマを借りるプロセスがICカードを用いて解錠/施錠するセルフサービス型である点と、セルフサービスであるがゆえに、貸出拠点への人材の配置が必要なくなり、一般の駐車場にクルマを配置できる点です。

 また、一箇所あたりに配置するクルマの数は2、3台程度と少なく、そのかわりに、都市部の多くの駐車場にクルマを配置することで利用者の利便性を高めています。そして高度なITシステムを背景に、自由度の高い予約管理が可能になっており、単体の予約は最低1時間、延長は30分単位という短時間利用を可能にしているのも大きなユーザーメリットです。

写真2: Zipcarの車両

次のページ
Zipcarのサービスモデル概要

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この記事の著者

岩嵜 博論(イワサキ ヒロノリ)

株式会社博報堂 コンサルティング局ストラテジックプラニングディレクター
博報堂において国内外のマーケティング戦略立案やブランドプロジェクトに携わった後、近年は生活者発想によるビジネス機会創造プロジェクトをリードしている。専門は、エスノグラフィックリサーチ、新製品・サービス開発、ビジネスデザイン、ユーザ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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