いま、現場はiPadをどう使いこなしているのか?
iPad発売当初は、フリーランスや個人事業主の方がiPadを活用する事例が多く見られ、その後は医療業界である病院、製薬会社のMR(医療情報提供者:製薬会社の営業担当)が颯爽と持ち歩く姿が多く見られた。
病院のiPad導入の代表的な事例として神戸大学がある。杉本真樹医師を中心に元々Macで動かしていたOsiriX (オザイリクス)という画像処理ソフトウェアをiPadで表示させることにより、医療業務を大幅に進化させたといえる。また、製薬会社のMRたちが持ち歩くことにより、大量の学術論文等を持ち歩くことがなくなり、顧客である医師たちとのコミュニケーションも密にとることが出来るようになった。
その後iPadは、ビジネスの現場に着実に広がり、銀行や証券会社などの金融業界、高級ブティック、自動車販売など小売業、工場で利用する製造業など、幅広い分野でiPadが活用されている。そして、それはプレゼンテーションという初期の活用のみならず、業務にも使う企業が増えてきているということだ。
2010年に発売になり、即座に企業に受け入れられたiPadが、今なお増え続けている実態を見ていこう。
iPadは小売業の現場に大きく広がっている
iPad発売当初は、外回りの営業担当が持ち歩くケースが多かったが、現在は小売りの現場に広がっている。用途として一つ目は、販売員が顧客に商品を紹介する際に利用するケースだ。私が見てきただけでも、高級ブティックにはiPadが多く見られる。高級ブランドはすでに、iPhoneやiPadのケースを発売しているが、実はiPadを利用するユーザー企業でもあるのだ。
高級ブランドとはいえ、自社の商品すべてを店頭に揃えていないことが多い。ネットで見てきた商品、あるいは同じ型の色違いなど、店頭に訪れる顧客のニーズは、印刷物では満たされない。ファッション雑誌に掲載されたバッグを見せても、他の方向から見てみたいとか、バッグの内側はどうなっているのか、といったことを見てみたいものだ。特に、バッグ一個が数十万円もするような高級ブランドは、店頭に揃っていない商品を印刷物を見ただけで購入はしづらい。そういう顧客の購買意欲を促すためにも、iPadは必要不可欠なセールスツールなのだ。