カスタマー・エクスペリエンスが、なぜいま注目されているのか。
まずは人がクラウドやソーシャルメディアから、さまざまな情報を得るようになったことが挙げられる。モバイル端末が普及し行動も変化し、さまざまなことが常にモニタリングできるようになった。それらにともない、人の行動パターンもいま、変わりつつある。消費者としては、商品やサービスに対する期待や要求も以前より高まっている。
「常に接続があり、つながっていないとフラストレーションが溜まります」と語るのは、Oracle Corporationの製品開発担当グループ・バイスプレジデント デイビッド・バップ氏。
これらの技術変化、行動変化があり、情報を発信するメディア側も劇的に変わっている。この変化の中で企業競争は激しくなり、いままでのやり方では対処できなくなりつつある。「効果的に差別化しようとしても、それがかなり難しい状況です」とバップ氏。
さらにこの変化は、企業にとって予想していなかったマイナス面も出ている。ソーシャルメディアなどでは、26%の人がネガティブなことを告知し、86%はソーシャルメシアを使っていると仕事をしたくなくなるという調査結果もある。さらに、カスタマー・エクスペリエンスで悪い印象を受けると、企業はそれで20%の売上げを喪失するとの調査結果もある。
「これまで、ビジネスではプロセスの効率化を徹底してきました。しかし現在は、効率化のプライオリティは少し下がり、カスタマー・エクスペリエンスの向上がビジネスに大きく影響します」(バップ氏)
このように、カスタマー・エクスペリエンスがビジネス要件として重要ならば、もっと投資する必要がある。しかし、38%程度の企業しかそれにきちんと取り組めていないのが現状だ。取り組めない理由が、組織がサイロ化していてコミュニケーションがとれないこと。これはITシステムのサイロ化と同様だ。サイロ化による弊害はあくまでも企業側の言い訳であり「顧客はそんなことはどうでもいい」とバップ氏。顧客は、1つの会社、1つの窓口として接する。企業側にしてみればさまざまな接点があり、それを1つにしていかねばならない。
顧客はそれぞれの接点でどう思ったかを、他の人にすぐ伝えてしまう。顧客にはさまざまな世代、さまざまな考え方があり、企業はそれにも柔軟に対応しなければならない。さらに、製品やサービスを購入する前、購入時、購入後の利用時、さらには買い換え時といったように、顧客とライフサイクルで接する必要がある。顧客がいまライフサイクルのどこにいて、その場合にどう対処すべきか。「とはいえ、顧客は自分がライフサイクルのどこにいるかなんて考えていません」とバップ氏は言い、カスタマー・エクスペリエンス向上の難しさを指摘する。
難しい中にあっても、企業側はこのライフサイクルのどこに投資をすべきかを決めなければならない。組織同士の業務が重なる部分を改善し、どのような投資をすべきか見極める。そのためには、接点でのすべての流れである「顧客のジャーニーマッピング」を、改めて考える必要がある。
カスタマー・エクスペリエンス重要性、そしてそこに課題があることには同意はできる。ではいったい、どういう企業はアクションをとればいいのか。これには、さまざまなIT技術を利用していく必要がある。まずは、フレキシブルななインフラが必要だ。それを短時間で実現できなければならない。敏捷に対応し、それを可能にするパートナーを選ぶことになるのかもしれない。
選択の1つとしては、すべてが揃っているクラウドサービスということになるだろう。そして、選択するクラウドは、スタンダードであることが重要だとバップ氏は言う。実際、Oracleは包括的なクラウドサービスを提供している。そしてその特長はスタンダードだということ。つまりは「Oracleだけではなく、他のものとも一緒に利用できなければなりません」とバップ氏は言う。
そのカスタマーエクスペリエンスのための包括的なクラウドサービスとして、Oracleでは「マーケティング」「コマース」「セールス」「サービス」「ソーシャル」という5つを用意している。この中で特徴的なのが、ソーシャルの存在だ。他の4つはビジネス機能だが、ソーシャルはそれらとは分離し別に設けられている。このソーシャルは、そのほかのサービスをサポートする位置づけにある。組織のサイロ化を解消する組織内部のコラボレーションツールでもあり、さらにはサプライチェーンとのコラボレーションをも実現するものだ。