リサーチ対象を第一に考え、クリエイティブなチームには判断を委ねる
私がエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めるデザインコンサルティングファームfrogのグローバルインサイトチームは、一般的にトレンドスポットと考えられているニューヨークなどの世界の大都市だけでなく、リオデジャネイロやアジスアベバといった、通常はイノベーションという言葉からはあまり連想されない場所でもプロジェクトを実施している。実際には、こうした場所で新たな消費者層が拡大し、イノベーションが起こってきている。
デザインリサーチの原則1:リサーチに参加する人たちを第一に考える。
クライアントから依頼を受け、世界各地の人々の行動のしかたを調査するわけだが、クライアントを第一に考えてはならない。人々の住まいや職場に訪ねてデータを取らせてもらう場合、主役はその人々である。調査チームが第二、クライアントは第三だ。クライアントの意向を優先すると、適切なデータは得られない。
私はよく、プロジェクトを「チームで美味しい料理を作ること」に例える。美味しい料理を作りたければ、その材料を熟知していなければならない。同様に、デザインリサーチで使うデータについては、
- どこからきたのか
- どのように入手したか
- 強みと弱点
- どんな味(感じ)がするか
- どんなことが話題になるか
- その影響力
などを把握して、集めたデータを「有機的なデータ (organic data)」の状態にしておきたい。プロジェクトの最後には、単なる報告書や1つのコンセプトでなく、質のよいデータで構成された成果を、一流のレストランでサービスされる一皿の料理のように、自信を持ってクライアントに提示したいと考えている。
デザインリサーチの原則2:クリエイティブなチームの学習曲線
どんなプロジェクトにも学習曲線があるが、そのどこにいるかが分かることはない。もちろん、スタート時はカーブの一番下にいる。そこからカーブを上がっていくことは分かるが、いったんスタートしたら、どこにいるかは分からない。
クライアントは大金を投入しているから、チームが学習曲線のどこにいるのかといったことをいちいち知りたがるが、私に言わせれば、それは大きな間違いだ。クリエイティブなチームは、最大限の自由を与えられたときに力を発揮する。学習速度が遅くなれば、彼らはリサーチのやり方を変えて、他のことをする。そうすると、再び学習速度は上がってくる。毎日、チームは何を学んでいるかを話し合い、求めるべきものは変化していく。リサーチの目的さえチームでしっかり共有しておけば、その目的に向かっていく方法はメンバーたちに任せたほうがいい。