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ビッグデータ社会のプライバシー問題

名簿屋に未来はあるのか? データブローカーの役割と規制のあり方を考える

■第12回


 7月初に明らかとなったベネッセの顧客情報流出事件の影響で、いわゆる「名簿屋」の規制のあり方が問われている。「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」(IT総合戦略本部2014年6月24日決定)において、名簿屋規制は、継続検討事項の扱いであったが、にわかに立法化の機運が盛り上がりつつある。米国においても、名簿屋に相当する「データブローカー」に対する規制強化の機運が高まっているが、ビッグデータビジネスに重要なパーソナルデータ流通基盤としての役割を担っているため、立法化は慎重に検討されている。今回は、名簿屋/データブローカーの役割と規制のあり方について考える。

社会インフラ化する米国データブローカー

 本連載の第2回において、米国では、日本でいう「名簿屋」はデータブローカーと呼ばれ、上場企業やベンチャー企業が法令遵守に留意しつつ、巨大な資本を投下して大規模に行っていることを紹介した。データブローカーの代表的な企業であるAcxiomは年商約11億ドル(約1100億円、1ドル100円換算)で、顧客には行政機関やFortune100の中の47社が入っており、役員にはグーグルやマイクロソフトのOBも名を連ねている*1。日本の中小・零細企業が担う名簿屋とは異なり、米国のデータブローカーは、一大ビジネスなのである。

 日本の名簿屋がデータを販売することが主なのに対して、米国のデータブローカーのサービスは高い付加価値を提供している(図表1)。データブローカー大手9社のビジネスを分析した米国連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)の分類によると、米国データブローカーのサービスは、「マーケティング」、「リスク軽減」、「人検索」の3つに大きく分類される*2。

キャプチャ
▲図表1:米国データブローカーのサービスは高い付加価値を提供する
出所:米国連邦取引委員会(FTC)”Data Brokers A Call for Transparency and Accountability”
(2014年5月)を基に筆者作成

 マーケティングは、さらに「ダイレクトマーケティング」、「オンラインマーケティング」、「マーケティング分析」の3つに細分化される。どれも高度にITを駆使したサービスであり、名簿を右から左に流すようなビジネスではない。

 「リスク軽減」もさらに「ID確認」と「不正検知」に細分化される。金融機関は、厳格な本人確認が法で義務づけられており、その際にデータブローカーのID確認サービスを使っている。不正検知の例としては、ある企業でデータ漏洩が生じた際に、その企業から漏洩したものと同じデータセットを預かって、他のサイトで当該データが使用された際に、警告を発するサービスがある。

 FTCのレポートでは、データブローカーのビジネスにおいて、リスク軽減のサービスはマーケティングに匹敵するほどの売上規模があるという。こうしたサービスは、社会インフラ的な役割を担っていることを思えば、情報化社会の進展とともに今後も拡大していくことが予想される。

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課題は「透明性」と「説明責任(アカウンタビリティ)」の改善

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この記事の著者

小林 慎太郎(コバヤシ シンタロウ)

株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 兼 未来創発センター 上級コンサルタント専門はICT公共政策・経営。官公庁や情報・通信業界における調査・コンサル ティングに従事。情報流通が活発でありながら、みんなが安心して暮らせる社会にするための仕組みを探求している。著書に『パーソナルデータの教科書~個人情報保護からプライバシー保護へとルールが変わる~』(日経BP)がある。

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