社会インフラ化する米国データブローカー
本連載の第2回において、米国では、日本でいう「名簿屋」はデータブローカーと呼ばれ、上場企業やベンチャー企業が法令遵守に留意しつつ、巨大な資本を投下して大規模に行っていることを紹介した。データブローカーの代表的な企業であるAcxiomは年商約11億ドル(約1100億円、1ドル100円換算)で、顧客には行政機関やFortune100の中の47社が入っており、役員にはグーグルやマイクロソフトのOBも名を連ねている*1。日本の中小・零細企業が担う名簿屋とは異なり、米国のデータブローカーは、一大ビジネスなのである。
日本の名簿屋がデータを販売することが主なのに対して、米国のデータブローカーのサービスは高い付加価値を提供している(図表1)。データブローカー大手9社のビジネスを分析した米国連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)の分類によると、米国データブローカーのサービスは、「マーケティング」、「リスク軽減」、「人検索」の3つに大きく分類される*2。
マーケティングは、さらに「ダイレクトマーケティング」、「オンラインマーケティング」、「マーケティング分析」の3つに細分化される。どれも高度にITを駆使したサービスであり、名簿を右から左に流すようなビジネスではない。
「リスク軽減」もさらに「ID確認」と「不正検知」に細分化される。金融機関は、厳格な本人確認が法で義務づけられており、その際にデータブローカーのID確認サービスを使っている。不正検知の例としては、ある企業でデータ漏洩が生じた際に、その企業から漏洩したものと同じデータセットを預かって、他のサイトで当該データが使用された際に、警告を発するサービスがある。
FTCのレポートでは、データブローカーのビジネスにおいて、リスク軽減のサービスはマーケティングに匹敵するほどの売上規模があるという。こうしたサービスは、社会インフラ的な役割を担っていることを思えば、情報化社会の進展とともに今後も拡大していくことが予想される。