経営学部からプロの講師へ
PL/SQL解説書として定評のある「プロとしてのOracle PL/SQL入門」、目にした読者も多いことだろう。これを初版から執筆をリードしていたのが今回のDBプロである小笠原さんだ。ほかにも「SQL逆引き大全 363の極意」、「これならわかるOracle超入門教室」などOracle関係の解説書を手がけている。本業はアシストの教育部にて研修講師や研修企画などに携わっている。
学生時代の専攻は経営学部。アシストに応募したきっかけは「企業一覧アイウエオ順で上に並んでいたから。Webサイトを見て好感を持ちました」。決断が早い人なのかもしれない。加えて学生時代に京都在住だったことも影響した。小笠原さん曰く「ビルさんらしい、大柄な男性がテニスをしているのをたまに見かけていたんですよね」。ビルさんとはアシストの創業者であるビル・トッテンさん。京都に住んでいるそうなので、本人である可能性は高い。ビルさんのテニス姿が小笠原さんをアシストに引きつけた。
経営学部からするとITやコンピューターは未知の分野だったものの、「入ったら頑張ろう」とあまり心配していなかった。若さゆえだろうか。楽観的で勇気がある。
入社すると教育部に配属された。顧客向けにトレーニングを実施する部署だ。慣例的に教育部の新人は8月か9月には講師としてデビューする。コースの難易度に差こそあれ、講師として立つときは「新人だから」と言い訳はできない。
数ヶ月先には1人前のプロフェッショナル講師として顧客の前に立たねばならないため、配属直後からデビューまでは先輩に立ち振る舞いも含めて厳しく指導された。例えば画面を指し示すときには腕が体の前を横切るようなポーズになってはならない。「えー」や「思います」などの曖昧な表現も直された。
小笠原さん自身は内容にこだわった。「先輩のやっている内容をコピーしたら楽だけど、伝えたい本質や真意を 理解せずに分かった気になって話してしまうことが多い」と小笠原さんは言う。内容を理解して話しているか、テキストをただ音読しているかは聞く人が聞けばそれとなく分かってしまうもの。受講者から質問が出ればてきめんだ。先輩の指導を仰ぎながら、研修内容を徹底的に頭にたたき込み、自分なりの表現で伝えようと工夫した。
講師デビューしたときの講座はSQL解説。例えば「SQLビュー」を説明するにしても、講師により「問い合わせに名前をつけたものです」と表現する人もいれば、「表の一部を加工し切り取ったものです」と表現する人もいる。どう表現すべきか。
いろいろと悩んだ。「用語の解説をするのに概念から入るのか、定義から入るのか。受講者の理解度はどの程度か。もっといい表現はないか」。小笠原さんは本番ぎりぎりまでこだわり準備した。緊張のあまり講師本番の日は昼食を食べるどころではなかった。普通に昼食をとる同僚に「よく食べられるな」と思っていた。
集中するとほかのことがあまり目に入らないタイプなのかもしれない。新人で東京に住み始めたときは、始めたばかりの仕事に熱中するあまり新居に気が回らなかった。電気料金の振込用紙が届いていることに気づかず、電気が止められてしまったことも。帰宅したら冷凍庫の食材が溶けていたそうだ。