EMCはオープンソースに本気である
そして未来に向けた第3のプラットフォームである。ここでは何よりもスピードが重要であり、ビジネスの変化に対応できる選択肢や柔軟性も必要だ。
そのために、EMCは3つの「スピード」を向上させる手段を提供していく。
まず、デジタルの世界でユーザーにリアルタイムに影響を与えるためのリアルタイムアナリティクスに対応できるスピード。
さらに、ストレージリソースを必要に応じて迅速に利用するためのスピード。
そして、ストレージリソースを物理的に用意するために必要な構築・運用のスピードである。
リアルタイムアナリティクスのスピードに対応する上で考えるべきポイントは何か。まずハードウェアのリソース間の応答時間を見てみよう。CPU、SRAM、DRAM、サーバーサイドフラッシュ、オールフラッシュアレイへと、CPUからの距離に比例して、応答時間と拡張性が増大する。そして、「第3のプラットフォームで重要となるのはココです」と、若松氏はDRAMからサーバーフラッシュのあたりを指した。
「リアルタイムアナリティクスにはDRAMレベルの応答性能が必要です。かたや、拡張性はサーバフラッシュまたはそれ以上のものが今後必要となります。 CPUから距離を離さずに、拡張性を高めるソリューションが必要になります」(若松氏)
それを実現するのが、DRAMの拡張として使用でき、ラックスケールの拡張性を提供するDSSDだ。EMCが2014年に買収。こちらもフラッシュ製品だ。XtremIOは業務アプリケーションやデータベースの仮想化基盤、仮想デスクトップ等の第2のプラットフォームでの適用が想定されているのに対し、DSSDではインメモリデータベースなど第3のプラットフォームでの活躍が見込まれている。
次に、必要に応じたリソースを利用するスピードだ。これにはx86サーバの内蔵ディスクをサーバ間にわたってプール化し、ブロックストレージとして使用することを可能とするEMCのソフトウェア製品ScaleIOで対応を強化した。x86サーバがあれば、簡単にエージェントをインストールして、オンラインでサーバの増減により容量と性能を増減できるが、それだけではない。今回、ScaleIOの無償提供を開始した。無償提供というと何らかの制限がつくものが多いが、若松氏は「機能制限なし。容量制限なし。期間制限なし」と胸を張る。社内にサーバがあれば、アジャイル開発のための一時的なストレージリソースをコストをかけずにすぐに簡単に作ることができる。無償化によって、さらにストレージリソースを利用するスピードが向上することが期待される。
そして、構築や運用にもスピードは重要だ。ソフトウェア定義とはいえ、必ず何らかのハードウェアが必要になる。利用できるx86サーバが無いとき、もっとも構築、運用を早く、簡単にするものが、「ハイパーコンバージドインフラストラクチャ」だ。サーバ、ネットワーク、ストレージのすべての機能を抽象化し、サーバ上に展開したものをアプライアンス化した製品だ。サーバを追加するだけで、シンプルに拡張できるスケールアウトアーキテクチャがベースになっている。ソフトウェアのアップデートや保守も一元化される。EMCが提供するハイパーコンバージドインフラストラクチャには、VMwareのvSphereとvSANをベースにした「VSPEX Blue」とハイパーバイザ非依存でScaleIOをベースにした1,000ノード以上に拡張できるラックスケールの「VXRACK」の2つあり、既存のお客様環境や拡張性要件に応じた選択肢として用意している。
そして、最後に2015年のEMC World最大のサプライズとして、大きく打ち出されたのがオープンソース化だ。EMCというと独自技術により先進性を提供してきたイメージが強く、「オープンソース」という単語が出てくること自体が「意外」と受け止める人が多かった。しかしEMCは本気である。
EMCは自社製品をオープンソース化することで、自らユーザーに対してEMCのロックインを排除し、ユーザーに最大限の選択肢と柔軟性をもたらすことが基盤技術として選ばれる上で重要であることを理解している。
今回、第一弾としてオープンソース化が発表されたのは、ソフトウェア定義ストレージとなる「ViPRコントローラー」のオープンソース化だ。第2第3のプラットフォームで利用される様々なストレージを一つのインターフェースでプロビジョニング、利用するためのソフトウェア定義ストレージの一つだ。この製品によって、第2第3のプラットフォームの違いを意識することなく、多様なストレージを使い分けることができる。この製品のソースコードを「CoprHD(カッパーヘッド)」というプロジェクト名で6月よりコミュニティに公開している。コミュニティにてオープンでスピーディーな開発を促進するとともに、EMCの枠を超えて幅広くユーザーの声を反映させることでよりよい製品にしようとしている。
時代だけではなく、EMCそのものが第3のプラットフォームへと意欲的に変化している――そんな印象を受けた。