顧客とのより良い関係を築くプラットフォームを提供
そんな大盛況のDreamforceで、もっとも人を集めるセッションがSalesforce.comのCEO マーク・ベニオフ氏が登場する基調講演だ。ステージに登場したベニオフ氏は「よりスマートで知性のある世界に移り変わりつつある」と語る。これは、AIの技術がさまざまなシーンで使われるようになったからだ。そしてIoTでさまざまなものが繫がるようになり、その際のコミュニケーションの仕方もかなり賢くなっている。さらに繫がっている「モノ」の後ろには、必ず「顧客」がいる。
「顧客とより良い関係を築く。それを実現したいからこそ、皆さんはDreamforceに参加するのでしょう。今、そしてこれからは顧客の時代であり、そのことを議論する場がDreamforceです。さらにSalesforceは、顧客とのより良い関係を築くためのプラットフォームを提供します」(ベニオフ氏)
そのプラットフォームを活用することで、世界を変えることができる。そのためにプログラマーがいちいちコードを書く必要はない。Salesforceのプラットフォームを活用すれば、自分がやりたいことを実現できる。それをまさに目指しているとベニオフ氏。
「これからは、AIが蔓延する世界が来る。SalaesforceにもAIの機能が組み込まれるようになっている」(ベニオフ氏)。これを実現するために、すでにSalesforceではさまざまな企業を買収しており、それらから得た技術により、AI的の機能の組み込みに成功している。また、AIや機械学習の機能を持った企業や技術を買収した結果もあり、世界の優秀なデータサイエンティストがSalesforceに集まっているという。
これまでに、そしてこれからSalesforceに統合するAIの機能を総称し、ベニオフ氏は「Salesforce Einstein」を発表した。「Einsteinは、魔法のようなものに見えるかもしれません。Einsteinは、複雑なものをシンプルにするのが得意です。これにより、Salesforceをイマジネーションを刺激する場にしたいと考えています」
もう1つ、ベニオフ氏が強調するのが、「スピード」だ。
「これからの時代は、何をするにも速くなければならない。それを実現してきたのが「Lightning」です。これについても新しいリリースを出します。これにより、さらにスピードは加速します。インテリジェンスが全てのものに組み込まれます。そして、何でも速くならなければならないのです」(ベニオフ氏)
Salesforce.comのCTO パーカー・ハリス氏は、エンタープライズのアプリケーションが、Amazonで本を買うように簡単ではないのはなぜか考えた。
「iPhoneのSiriを使ってUberを呼ぶといったことは、すでにうまくいっています。これはAIで実現されているのです。Facebookの顔認識もAIで実現されているし、すでにクルマでもAIを使っています。AIは世界をより良くすることができます。とはいえ我々はAIが欲しいのではなく、インテリジェンスが欲しいのです」(パーカー氏)
複雑なものをシンプルにするには、インテリジェンスが必要だとパーカー氏は説明する。AIを活用することで、エンタープライズITの世界で今まで以上のことが実現できるようになる。これはデータで洞察を得てITシステムを賢くできることだ。その結果として、Salesforceは世界でもっとも賢いCRMになるとパーカー氏は言う。
「Einsteinのプロジェクトは、5年前にはすでに始まっていました」と語るのは優秀なデータサイエンティストとして紹介されたシャブハー・ナバー氏だ。プロジェクトは、CRMに蓄積されるデータを分析しさまざまな洞察を得る取り組みから始まっている。
「CRMのデータを見てすぐに分析できます。データソースが増えても、それはすぐにクリックして分析に反映できます」とナバー氏。Salesforceには、すぐに使えるデータがユーザーにより蓄積される。蓄積されるデータに対しEinsteinが背後で処理し、どんなことが起きるかを予測する。データを見れば、競合状況なども自動で分析でき、Einsteinがデータを見ることで自動的にさまざまな示唆をユーザーに与えてくれる。たとえばセールスのリードがどんな優先順位になるかを自分で推測しなくても良くなるのだ。