ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は、日本のCIOが押さえておくべき人材に関する調査結果を発表した。その中で、日本企業における従業員の中で「今の会社で働き続けたい」という意思を持つ人の割合は世界平均より少ない、という調査結果が明らかになったという。
ディスティングイッシュト バイス プレジデントでガートナー フェローの足立祐子氏は、「リモートワークの浸透や従業員の世代交代を契機に、人材に関する現在の常識は通用しなくなります。CIOは、就業意欲、働き方、スキル習得などに関する知識を常に更新し、時流に即した人材戦略と施策を進めていくことが重要です」と述べている。
日本企業の従業員の中で「今の会社で働き続けたい」という意思を持つ人の割合は、世界平均より少ない
ガートナーが世界で実施した調査において、「今の会社で働き続けたい」と考えているかを尋ねたところ「今の会社で働き続けたい」と考えている人の割合が世界では平均39%であるのに対し、日本では35.8%と世界平均を下回っていることが明らかになった。
足立氏は、「日本のCIOは、『どうすれば、従業員が意欲をもって長く働き続けてくれるようになるか』という点を探求し、2021年以降の人材戦略に反映させなければなりません。従業員が意欲をもって長く定着するような組織を作るためには、『従業員を管理する』という発想から、『従業員エンゲージメントを強化する』という発想に転換することが有効です。従業員エンゲージメントの強化に当たっては、まずは人事や人材開発部門と協力してマネージャー層の意識改革に着手し、制度や慣行を段階的に改善していくことを推奨します。具体的には、キャリアパスや現在の業務の割り当て方法を見直し、やりがいや成長機会を感じられるようにする、業務と個人の目標を結び付けられるようにし、現在の業務を意味あるものにする、リーダーシップやスキルアップなどの教育や支援を行う、などの施策が考えられます」とコメントしている。
Z世代は、業務とプライベートの境界線が曖昧である
個人差はあるものの、ミレニアル世代(1980~1994年生まれ)は、比較的ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向が強い一方、Z世代(1995年以降の生まれ)は、ワーク・ライフ・バランスを重視する姿勢はミレニアル世代よりも低いという。業務を通じて経験の幅を広げ、自己成長を実現することに期待を示す傾向が強いことが同社の調査からわかったとしている。
ハイパフォーマーの定着には、待遇よりも受け入れ側の能力が重要である
また同社の調査では、入社の決め手は「給与」と「企業の成長性と安定性」が常に上位を占めている一方で、退職の決め手としては「同僚の能力」「マネージャーの能力」「人事管理」など、人に関係する項目が重視されることがわかっている。受け入れ側の従業員も高い能力を持ち、ハイパフォーマーが活躍できる組織文化が醸成されていなければ、どれだけ厚遇してもハイパフォーマーが退職するリスクは抑制できないという。
スキル予測に基づいて習得したスキルの大半は、実際には使われない
ガートナーが実施した調査では、予測に基づいて習得したスキルのうち50%以上は使われておらず、むしろ、予測せずに都度のニーズに応じてスキル教育を実施した方が、活用されるスキルは多かったという結果になった。教育を重視するCIOは、将来必要になるスキルを予測したいと考えることが多いが、技術の進化が激しく、さらに経営環境が不透明な現代において、中期的に必要になるスキルをCIOがすべて確実に予測するのは不可能だとしている。
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