精度の高い需要予測とアナリティクス人材育成支援も実施
サプライチェーン全体の最適化で重要なのが、需要予測の精度を上げることだ。そのために米国の流通業大手などでは自社にデータサイエンティストを抱え、予測分析モデルを構築し活用する例が増えている。
とはいえ、ある領域で精度の高いモデルができても、それをなかなか横展開できず、全社規模で活用するに至らないケースも多い。そこで「全社的に予測モデルを活用できるようにするため、ガバナンスを効かせアナリティクスのライフサイクルを回すプラットフォームとしてSASを選んでいます」と井上氏。
一方欧州などでは、データサイエンティストを自社でなかなか確保できないため、データサイエンティストが行う分析業務の部分を、サービスの形でSASがサポートする例もあるとのことだ。
日本の大手飲料メーカーでは、商品のライフサイクルが短くなる中、新商品の需要予測でSASを活用している。新商品は過去の販売実績データがないため、それを使い今後の売れ行きを予測できない。
SASならば、商品の特徴や販促の情報から類似性の高い商品を見つけ、その商品の販売実績などを用い、新商品の需要予測が可能となる。「SASを利用し新商品の需要予測精度が10%以上向上しています」と井上氏は言う。
コンビニエンスストアでは、おにぎりやお弁当などのデイリーメーカーが、発注に対しすべてを納期中に完全納品する契約を結んでいることが多い。注文に応えられないことを避けるため、予測よりも多めに製造し備えることになる。
これがフードロスにつながり、さらに多めに作っていたつもりでも足りない際には夜間もフル稼働で注文対応し現場が疲弊することにもなる。予測の難しい新製品の商品をどれくらい作れば良いのかを、価格やキャンペーンの状況、過去の商品販売のデータなどを用いSASを使って高い精度で予測しているのだ。
国内の大手アパレル企業でも、サプライチェーン全体の最適化に取り組んでいる。季節の影響を大きく受けるアパレル商品では、商品ライフサイクルが極めて短い。そのため限られた期間で販売ロスを最小化し、その上で商品を売り切る必要がある。これには価格の最適化が重要であり、それをSASで実現している。
「SASのアナリティクスの特長は、個別業務に対応するだけでなく、サプライチェーン全体の最適化を可能にする分析プラットフォームになっていることです。そして高度な需要予測のモデルとともに、ノウハウが豊富なコンサルティングのサービスも併せて提供できます。また、アナリティクスを企業の中でリードしていくための人材育成もサポートしています。これらを柔軟に組み合わせて提供できるのが、SASの強みです」(井上氏)。実際、ブリジストンでは100名体制のデータサイエンス組織の構築を目指しており、そのチーム立ち上げをSASがサポートしている。