「集計は手作業、分析すら困難」統一なきグループ企業間のERP、経営指標の統合と業務標準化の重要さ
テクノホライゾンが進めた、基幹システムの見直しとその効果

M&Aによる事業拡大と多くのグループ会社を抱える企業は、経営指標の統一や業務プロセスの標準化といった課題に直面している。愛知県名古屋市に本社を置き、映像機器や産業機器を中心に多様な製品とサービスを展開しているテクノホライゾンもその一つだ。2021年4月1日には、連結子会社3社(エルモ社、中日諏訪オプト電子、タイテック)との経営統合を行っている。テクノホライゾンの子会社かつ、同グループのシステム部門を担うアドワーの執行役員である森下重信氏に、テクノホライゾングループにおける基幹システム統合の経緯やその効果について取材した。
高齢化するシステム、求められていたグループ間でのERP統一
テクノホライゾンでは近年積極的にM&Aを行なっており、アドワーはテクノホラインゾンの連結子会社であるアイ・ティ・エル(ITL)を存続会社とし、同じく連結子会社である4社を消滅会社として吸収合併して2023年4月に誕生した新しい企業だ。

テクノホライゾングループのシステム部門を担うアドワーの基幹システム事業本部では、SAPやInfor LNといったERPを扱っている。これらの事業はテクノホライゾンから引き継いだものであり、過去10年以上にわたり継続して行われているという。また、基幹システム事業以外に、ソフトウェア開発やエンジニア派遣なども行っている。
「基本的に私達はSAP導入支援をお客様向けに提供したいと考えていますが、今現在はグループ内の導入展開、あるいは保守作業にリソースに割り振っている状況です」と語るのは、アドワーで基幹システム事業本部 本部長を務める森下重信氏だ。

テクノホライゾンでは基幹システムに「SAP S/4HANA」を導入している。そもそもSAP ERPをテクノホライゾングループで導入したのは2010年ごろ。テクノホライゾンの前身企業であるタイテックが最初だった。産業機器メーカーであるタイテックは、業績向上にともない人材や業務量が増えていたが、基幹システムは自社の情報システム部門がスクラッチで開発したものを使っていた。

だが販売管理システムや製造管理システムといった形で、目的ごとにシステムは分散していたことに加え、通常のパッケージとして会計ソフトも存在していた。しかし、事業の成長やグループの拡大とともに、基幹システムの拡張性や耐久性についての問題も抱えるように。加えてシステムを開発していた人材も属人化や将来の高齢化が懸念され、その後の10〜20年を考えたときに、基幹システムの見直しが必要となったのだ。
「業務はある程度できても、経営のための数字がなかなか見えない仕組みでした。業績も良くなって生産量も増え、製品の種類も増えていくとなると、様々な原価や売上粗利などのレポーティングを人が手作業で集計しなければならず、分析もできない状況でした」(森下氏)
同じ頃、上場企業の財務報告における信頼性の確保を目的とした内部統制制度であるJ-SOX(内部統制報告制度)も広まっており、タイテックでも対応していた。しかし、ERPを導入する前は人手に頼っており、現場からはシステム化を求められていたのだ。
そのような課題から、海外展開も含めて対応できる基幹システムとしてSAP ERP(ECC6.0)を選定。その後、海外に工場を作った際にも同じようにSAPを導入し、徐々にグループ企業に展開していった。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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