三井住友カードによる「Head of AI Innovation」設置の狙い
今回、「Head of AI Innovation」として招かれた野口竜司氏は、“AIの専門家”として本誌で何度も取材している人物。ZOZOテクノロジーズのVP of AI driven businessを務めた後は、日本ディープラーニング協会の人材育成委員(現任)、ELYZAの取締役CMO(現任)、金融データ活用推進協会の顧問(現任)などを務めており、2022年12月からはカウネットのデータ・AI担当社外取締役も受け持つ人気ぶりだ。
では、各所から引っ張りだことも言える野口氏をなぜ迎え入れたのか。そこには三井住友カードが近年注力している「マーケティングの高度化」を加速させる狙いがある。同氏をHead of AI Innovationという役職に迎えた背景について佐々木氏は、「デジタル技術を駆使して多様な顧客体験やサービスを提供する事業者が増えている現状があり、我々も対応していく必要がある」と説明する。同社では、2017年から予測系AIの活用を皮切りに、これまで多岐にわたる施策を展開してきた中、社内において独自の技術開発や人材育成によりスピード感が求められているという。
「これまで親交があったこともあり、野口氏の深い知見によってAI技術の活用をさらに推進していく方針が固まった」(佐々木氏)
同社を傘下に収める三井住友フィナンシャルグループが「DX人材」の育成に着手している傍ら、よりスピード感が求められている三井住友カードでは野口氏の起用により、実際のビジネスタスクにAIを活用して“成果物を作り上げる”レベルまで押し上げていく。オファーを受けた野口氏は「当初はまったく予想しておらず驚いた。私自身の“予測AI”は、予測を外してしまった」と軽妙に振り返る。社会的影響のある企業だからこそできることを1つずつ、ストーリーとして組み立てている最中だという。
なお、三井住友カードは2017年に予測系AIである「DataRobot」を導入しており、業務におけるAI活用を進めてきた印象も強い。データ戦略部長として中心的役割を担ってきた白石氏は「DataRobotの利用によって『AIの民主化』を推進してきた一方、課題はより高度化している。そこに対応していくためには専門的な知見が必要であり、野口氏の招聘によって取り組みを進化させるための準備が整った」と意気込みを見せた。