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ガリガリ君の赤城乳業の挑戦、ECCからパブクラ版S/4HANAへの移行を決めた理由とは?

 「ガリガリ君」「ガツン、とみかん」「ミルクレア」など、コンビニやスーパーでお馴染みの商品を展開する赤城乳業が、PSI(生産/販売/在庫)管理の高度化に向け、SAP ERP ECC 6.0からSAP S/4HANA Cloud Public Editionへの移行を進めている。ECCユーザーの移行先と言えば、ほとんどがプライベートクラウド版を選択するが、同社はなぜパブリッククラウド版を選んだのか。7月31日に行われたSAP NOW Japan 2024の事例講演「不動在庫の削減と売上2倍を実現した赤城乳業の挑戦」とその後の取材から、狙いが見えてきた。

不動在庫削減はアイスクリームビジネスの宿命

赤城乳業
(左から)赤城乳業株式会社 財務本部 情報システム部 主任 下地翔太郎氏
同部 係長 石井敏行氏
同部 部長 吉橋高行氏
同部 課長 高橋一仁氏

 埼玉県深谷市に本社を置く赤城乳業(創業は1931年〔昭和6年〕、1961年に赤城乳業に改組)は、社名に「乳業」とあるものの、創業から一貫してアイスクリーム事業だけでビジネスを展開してきた。業績は堅調に推移しており、2023年度の売上高は過去最高の約570億円を記録し、600億円台が見えてきたところだ。主力商品のガリガリ君の認知度は非常に高く、定番のソーダ味だけでなく、様々な限定フレーバーを開発してきた実績があり、最近では梨味の評判が高い。さらに、コーポレートスローガンでは「あそびましょ。」を掲げ、ユニークでエッジの効いた商品を出している。元々、CVSの黎明期から共同で商品開発をしてきた歴史もあり、数多くの商品が人気商品に成長している。

 ビジネスの拡大にともない、大きな問題になってきたのが在庫管理である。赤城乳業のようなアイスクリーム専業メーカーは、アイスクリーム需要は夏の6月〜8月がピークで、それ以外は耐える月というジェットコースター経営になりがちだ。この販売傾向に対して、夏場の生産キャパシティを上げてしまうと、冬は大赤字になる。これを避けようと、赤城乳業では春先から備蓄在庫を持つことで対応してきた。とはいえ、商品がアイスクリームとあって、野晒しでの保管はできない。外部の倉庫会社の冷凍庫で委託管理をしてもらわなくてはならず、毎月の保管料の負担も大きい。さらに、春先から備蓄を始めても、販売トレンドを見誤ると、商品が売れ残ってしまう。そうなると廃棄するしかなく、コスト負担はバカにならない。経営リスクを高めるこの不動在庫をいかに減らすかが、赤城乳業にとって長年の経営課題であった。

 この課題解決のために取り組んだのが、SAP ERP ECC 6.0(以降、ECC)を導入しての統合的なPSI(生産、販売計画、在庫)管理であった。現在の赤城乳業はSAP S/4HANA Cloud Public Editionの導入を進めているところだが、最初にECCを導入しようと考えた時期は、売上高300億円を超えた2011年に遡る。この年は本庄工場が立ち上がり、生産能力が倍増した。増える需要に対応できるようになったものの、固定資産償却を行いながら、損益構造の改善に取り組まなくてはならなくなった。当時の中期経営計画では、売上高・利益率ともに食品会社としては高い目標を設定しており、その実現に向けては、原価管理を精緻に行うことが重要と同社は考えた。

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エンドユーザーからの評価が最も高かったSAP ERP

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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