不動在庫削減はアイスクリームビジネスの宿命
埼玉県深谷市に本社を置く赤城乳業(創業は1931年〔昭和6年〕、1961年に赤城乳業に改組)は、社名に「乳業」とあるものの、創業から一貫してアイスクリーム事業だけでビジネスを展開してきた。業績は堅調に推移しており、2023年度の売上高は過去最高の約570億円を記録し、600億円台が見えてきたところだ。主力商品のガリガリ君の認知度は非常に高く、定番のソーダ味だけでなく、様々な限定フレーバーを開発してきた実績があり、最近では梨味の評判が高い。さらに、コーポレートスローガンでは「あそびましょ。」を掲げ、ユニークでエッジの効いた商品を出している。元々、CVSの黎明期から共同で商品開発をしてきた歴史もあり、数多くの商品が人気商品に成長している。
ビジネスの拡大にともない、大きな問題になってきたのが在庫管理である。赤城乳業のようなアイスクリーム専業メーカーは、アイスクリーム需要は夏の6月〜8月がピークで、それ以外は耐える月というジェットコースター経営になりがちだ。この販売傾向に対して、夏場の生産キャパシティを上げてしまうと、冬は大赤字になる。これを避けようと、赤城乳業では春先から備蓄在庫を持つことで対応してきた。とはいえ、商品がアイスクリームとあって、野晒しでの保管はできない。外部の倉庫会社の冷凍庫で委託管理をしてもらわなくてはならず、毎月の保管料の負担も大きい。さらに、春先から備蓄を始めても、販売トレンドを見誤ると、商品が売れ残ってしまう。そうなると廃棄するしかなく、コスト負担はバカにならない。経営リスクを高めるこの不動在庫をいかに減らすかが、赤城乳業にとって長年の経営課題であった。
この課題解決のために取り組んだのが、SAP ERP ECC 6.0(以降、ECC)を導入しての統合的なPSI(生産、販売計画、在庫)管理であった。現在の赤城乳業はSAP S/4HANA Cloud Public Editionの導入を進めているところだが、最初にECCを導入しようと考えた時期は、売上高300億円を超えた2011年に遡る。この年は本庄工場が立ち上がり、生産能力が倍増した。増える需要に対応できるようになったものの、固定資産償却を行いながら、損益構造の改善に取り組まなくてはならなくなった。当時の中期経営計画では、売上高・利益率ともに食品会社としては高い目標を設定しており、その実現に向けては、原価管理を精緻に行うことが重要と同社は考えた。