三菱UFJ銀行が“生成AI”活用にアクセル、グループ企業への展開も視野にいれた新プロジェクトの狙いは
業務効率化にとどまらない、営業提案活動のさらなる高度化へ

三菱UFJ銀行は、長年にわたって営業部門における「ルーチンワークの効率化」に取り組むことで、着実に成果を上げてきた企業だ。そして現在、さらにもう一歩踏み込み「創造的な仕事」についても、生成AIを使った効率化に挑んでいる。その具体的な内容や成果、今後の目標などについて同行のキーマンに聞いた。
「本来の営業活動」もデジタルで効率化できないか?
国内メガバンクとしていち早くデジタル活用に取り組み、Fintech企業としてのイメージを強く打ち出してきた三菱UFJ銀行。その後の「DXの潮流」にも素早く対応し、特にコロナ禍以降はペーパーレス化やリモートワーク環境の整備などで、デジタル活用による業務改革を推し進めてきた。
現在、これらの取り組みをさらに加速させ、データ利活用やAI活用などの領域に力を入れている。2024年4月には、DX推進のための全社横断組織「デジタル戦略統括部」を新たに立ち上げ、AIをはじめとする先進技術を活用した業務改革に着手したところだ。
こうした全行レベルでの活動の一方、各事業部門でも業務効率化に向けたデジタル活用に取り組んでおり、デジタル戦略統括部と連携しながら「現場発のDX」を着々と推進。日系大手企業の顧客を対象に各種バンキングサービスを提供する「コーポレートバンキング事業本部」では企画部が中心となって、主に営業部門の業務効率化に寄与するデジタル活用の施策に取り組んでいる。
三菱UFJ銀行 コーポレートバンキング企画部 企画グループ 調査役 木村智彦氏によれば、コーポレートバンキング事業本部ではこれまで長年にわたってデジタル活用による業務効率化に取り組んできた結果、かなりの成果をあげるまでに至ったという。
「コロナ禍に対応するためのペーパーレス化やリモートワーク対応などを経て、ルーティンワークの効率化はかなり進められました。その一方で、営業の提案活動に要する時間だけは、なかなか減らすことができず、何とかこれらの業務を効率化できないかと、2022年頃から試行錯誤を繰り返しています」
より良い提案を行うために、顧客が現在抱えている経営課題を分析したり、周辺情報を収集したり、最適なソリューションを検討したりといった作業は、営業担当者が最も注力すべき業務であり、それ以外のルーティンワークの効率化を進めてきたことで、より多くの時間を費やせるようにはなっていた。しかし、木村氏によれば、それだけでは今日の大手企業が抱える課題やニーズは把握しきれないと指摘する。
「経営環境の変化スピードは年々増しており、私たちのお客様である日系大手企業が抱える経営課題も以前とは比べものにならないほど多様化しています。これらの課題を的確にとらえ、最適なソリューションを提案するためには、営業担当者もこれまで以上に多くの情報を収集し、多くの事柄を学ぶ必要があるでしょう。そのためには、やはり提案活動のための作業を効率化し、同じ時間内でより密度の濃い検討を行えるようにしなくてはなりません」
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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