以下、4名のCIO/CISO職域の方にコメントをいただきました(氏名・五十音順)。
JTB 黒田恭司氏、日清食品ホールディングス 成田敏博氏、横浜市 福田次郎氏、損害保険ジャパン 村上明子氏
ガバナンスとセットでIT/DX領域の「One JTB」推進へ(JTB 黒田恭司氏)
2024年を振り返って
2024年は、既存システムのモダナイゼーションを本格化させた1年になりました。老朽化したシステムの柔軟性、拡張性、保守性を飛躍的に向上させられるよう、基幹系・財務会計システム、ネットワークインフラなどの大型トランスフォーメーションを同時並行に推進し、その成果が形になってきました。
また、ITガバナンスを考慮した各種SaaSソリューションの適用も進め、スマートワークの基盤作りにも着手しています。一方で、IT市場全体が生成AIへフォーカスし、SaaSベンダーもその機能を大きく拡充しており、事業会社にとって、その選定はこれまで以上に難しくなってきたと感じる1年でした。自社でも生成AIへの取り組みを急ピッチで進めており、自社内の活用にとどまらず、お客様サービスにも活用することを検討しています。
JTB
常務執行役員 CIO/CISO
黒田恭司氏
1992年、日本アイ・ビー・エム入社。ITエンジニアとして官公庁の顧客を担当を経て、さまざまな大規模プロジェクトでプロジェクトマネージャー、統括プロジェクトマネージャーを歴任。デリバリー品質マネジメント、コロナ禍の働き方変革リード、リスキリングのリーダーやサービス部門のビジネス責任者などを歴任。
2023年からJTB現職へ。外部活動として、一般社団法人 日本情報システムユーザー協会(JUAS)理事も務める。
2025年の展望
2025年は、引き続き、大型トランスフォーメーションプロジェクトを推進し、サステナブルなJTBのIT基盤を構築、拡大するとともに、国内外のグループ会社にも目を向け、ガバナンスとセットでIT/DX領域のOne JTBを推進していきます。
そしてJTBの目標である、持続可能な観光産業の実現のために、エコツーリズムの推進や観光DXなど、地域コミュニティとの連携による新たな価値創出の注力を支えるべく、DX人財の育成、強化に努めます。
業界をリードする存在であり続けることを目指すとともに、業界の垣根を超えて起こる様々なディスラプションの波を超えていくためにも、改めてJTB全体のバリューチェーン見直しにITの力で貢献していきます。
「デジタル・リスキリング」の在り方を確立する(日清食品ホールディングス 成田敏博氏)
2024年を振り返って
“先守後攻”──当社のIT戦略には明確な優先順位があります。サイバーセキュリティ対策など「守り」の施策をしっかりと固めた上で、データや生成AIの利活用など「攻め」の施策を進めていく、この優先順位は当社にとって不可逆なものです。
2024年は、ランサムウェア対策などのサイバーセキュリティの対応体制構築を確実に進捗させ、その上で、将来に向けて全社的な生成AI活用の素地をつくることに注力できたように思います。また、各従業員が業務を遂行する際に生成AIを利用することに加え、あらゆる社内システムのデータを集約し、統合的にデータ利活用をするための「全社統合データベース」の構築を進捗させられたことは、今後の生成AIの活用余地を大きく拡げるものとして期待しています。
日清食品ホールディングス
執行役員・CIO(グループ情報責任者)
成田敏博氏
1999年、新卒でアクセンチュアに入社。 公共サービス本部にて業務プロセス改革、基幹業務システム構築などに従事。
2012年、ディー・エヌ・エー入社。グローバル基幹業務システム構築プロジェクトに参画後、IT戦略部長として全社システム企画・構築・運用全般を統括。
その後、メルカリ IT戦略室長を経て、2019年12月に日清食品ホールディングスに入社。2022年4月より現職。
2025年の展望
2025年は、企業における生成AI活用がさらに大きく前進する年だと考えています。各企業におけるナレッジや社内システムのデータを生成AIが参照し、そこから得られる情報を利活用する事例が多く出てくるでしょう。当社としても、食品製造業としての業務プロセスのあらゆる部分で生成AIを効果的に活用したユースケースを創ることに注力していく予定です。
また、当社のような非IT企業でも、あらゆる従業員が生成AIなどのデジタルを適切に使いこなす力を持っているかどうかが、企業の競争力を少なからず左右する時代が近く訪れるはずです。こうした状況に備えるため、今年始動した「NISSIN Digital Academy」をさらに拡充し、新たな時代に向けた従業員に対する「デジタル・リスキリング」の在り方を確立していく予定です。こうした取り組みは短期で成果が出るものではありませんが、5年後、10年後に、各企業間で大きな差となって現れるものだと考えています。