SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum

2025年1月31日(金)17:00~20:30 ホテル雅叙園東京にて開催

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

EnterpriseZine Press

日産自動車がCDPで「顧客体験価値の向上」に挑む、販売店との連携強化へ 既に新車購入意向度を算出も

直面した顧客の行動変容、変わる顧客接点をどう拡充する?

CDPで実現した顧客データの把握、ヒントカードによる実績も

 2021年からスタートしたプロジェクトは、2023年度には「C360」に順次データを格納・統合。最初の成果は、顧客理解における「リアルタイム性」の強化だったという。「部⾨横断で統合された顧客データ」と「販売店での情報(新車購入やメンテナンスデータなど)」を一元化し、バッチ処理を日次で行えるようになったことで、顧客の購買行動や好みの変化などをスピーディーに捉えられるようになった。

 たとえば、これまでは新車を購入したばかりの顧客にも、新車情報のメールを配信していたが、当人には不要な情報であり、状況によっては煩わしく思われる可能性もある。それが「C360」による顧客データの一元管理により、購入状況をリアルタイムに把握・反映できるようになったことで即座に配信停止という選択がとれるようになった。細かな変化ではあるが、CX向上には大きな一歩といえるだろう。その後、顧客のニーズを分析し、情報収集・検討段階でボトルネックになっている部分を判断することで、顧客の状態に適した情報を提供できるようになった。

 「CDPで顧客の状態をリアルタイムに理解したことで、より適切なタイミングでの(メールやLINEによる)情報配信が可能となった。販売店との情報連携も進めており、オンラインでの顧客の行動データを共有することで、より効果的な商談を実現させていく」(北原氏)

 また、直近ではCDPに集約したデータを多方面に活用するための仕組みを構築したいという。既にCDPのデータは人手だけでは活用しきれないほどに大きくなっており、AIの活用も大きなテーマとなってきた。実際に2024年度前半から、AIを活用した機械学習サービスとCDPを連携させることで、「新車購入意向度のAIスコアリング」を開発。これはWeb上の行動データをもとに顧客ごとの新車購入意向度を算出し、その他の情報と掛け合わせた結果を基に販売員がアクションをとり、成約率の向上につなげようというものだ。

 さらに、外部パートナーとの連携により、顧客のライフスタイルの変化を捉えるための関連データを取得し、その分析結果も併記するようになった。こうした分析結果を販売店と共有するツールが「ヒントカード」と呼ばれるツールだ。

 たとえば、小さな子どもがいる家族が来店予定の際、オンライン上の検索履歴からセレナを検討していることを把握。あらかじめ他の状況を含めて情報を「ヒントカード」を通じて販売店に共有し、販売店ではお子さま向けにチャイルドシートを装着した状態の試乗車を準備しておく。そして来店当日、顧客はスムーズに試乗に進むことができ、購買意欲が高まり、成約に至るというわけだ。

 こうしたCDPを起点としたデータ分析・活用についても、インキュデータがアドバイザリーとして伴走。分析結果の共有方法やクエリの再利用など、効果的なCDPの活用方法を提案・サポートしている。運用においてもIT部門との連携は重要なポイントだ。末留氏は、「たとえばデータ品質や元データとの差異など、開発中には検知できないこともCDPを使いはじめると生じてくる。それらの原因究明や解説などを通じてIT部門とスムーズな連携を図ることで、快適なCDPの運営に貢献している」と語った。

 さらに2025年からは、顧客の次なる行動を予測し、一人ひとりに最適なアプローチやパーソナライズされた提案を目指している。

 インキュデータの末留氏は、「ビジネス部門がCDPにアクセスし分析・活用できるだけになっただけでなく、自らの施策効果を直接把握できるようになったことも大きな成果だ」と話す。それによりデータ活用のPDCAサイクルが効率的に回るようになり、より効果的な顧客対応も可能になっていく。

 北原氏は「『ヒントカード』など、オンライン・オフラインの情報を共有できる仕組みは既に持っていたが、CDPはそれをさらに加速させるものだ。販売店側の情報もリッチになっていき、フィードバックループが回っていくことで、今度はオンライン施策の精度が高まっていく」と期待を寄せる。

 そして、「日産車を購入される方はもちろん、購入して日常的に乗ってくださるお客様にこそ、リアルタイムでより役に立つ情報を提供したり、日常での困りごとの解決を図ったり、寄与できることも多いと考えている。一人ひとりにあわせて快適なカーライフを創出し、支援すること。そのためにCDPを活用し、顧客理解を深めていきたい」と意欲を見せた。

 日産におけるCDPは整備されたばかりとはいえ、そこにつながる様々な施策は既に多様化し成熟しているため、今後はさらなる活用による一層のシナジーが期待される。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
EnterpriseZine Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/21061 2025/01/16 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング