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#002 MySQLはOracleに救われた―松信嘉範氏

edited by DB Online   2011/05/30 07:00

レプリケーションの有無がライバルに差をつけた!?

オープンソースのRDBMSながら、MySQLが国内のエンタープライズ市場でも普及が進んだ理由について、松信氏は「やはりMySQLの名前を冠した法人が設立されたことが大きかった」と話す。OSSプロダクトが企業で採用されるにあたっての最大の懸案事項はサポートの有無だ。MySQL ABが小さいながらも日本法人を設立したことは、顧客からの信頼を得る大きな材料となった。多くのSIerともパートナー提携を進め、エンタープライズレベルでの導入事例を着々と増やすことに成功する。

日本で人気の高いもうひとつのオープンソースデータベースであるPostgreSQLとMySQLを比較してみたとき、松信氏はこう分析している。

「当時、すでにMySQLではレプリケーションをサポートしていましたが、PostgreSQLにはなかった(注: 9.0からサポート済み)。これはかなり大きな差につながったと思います。また、スレッドベースモデルのMySQLに対し、プロセスベースモデルのPostgreSQLは、Java EEを使ったコネクションプール型のシステムでは適していますが、PerlやPHPなどのリクエストごとに接続/切断を繰り返すことが主流の言語から直接使うのは性能面で厳しい場面があったと思います。エンタープライズレベルの普及という面でいえばもうひとつあって、実はPostgreSQLはOracleとの親和性がMySQLに比べて非常に高いんです。だから国内企業のOracle移行案件が多ければPostgreQLに有利に働くでしょうが、実際のところ、OracleユーザはOracleからあまり離れないというのが現状だと思います。逆にMySQLはOracleと似ている部分が少ないので、Oracleとの棲み分けがしやすいところがよかったのかもしれません」

MySQLはOracleに買われてラッキーだった

MySQLコンサルとしてグローバルに活躍していた松信氏だが、その後、二度の大きな買収に巻き込まれる。2008年1月のSun MicrosystemsによるMySQL AB買収、そして2010年1月のOracleによるSun買収だ。そして2010年9月、松信氏は日本オラクルを離れ、DeNAへと籍を移す。当時、いや現在も、OracleのSun買収で「MySQLは終わった」と嘆くオープンソース関係者の声は多い。松信氏の退職についても、そうしたゴタゴタに嫌気がさしたからなのでは…という憶測が流れたが、同氏はこれをきっぱりと否定する。

「お金がなくて動けないというのは、つらいこと。
MySQLはOracleに買われたことで救われた」

「転職の理由はコンサルティングやサポート以外の仕事をやりたいと少し前から考えていたからです。できればサービスカンパニーがよかったので、DeNAからの誘いはちょうど良いタイミングでした。決してオラクルが嫌だから辞めたわけではありません」

コンサルタントはやりがいのある仕事ではあったが、オープンソースのように予算の限られた世界では、1人で数多くの案件を、それも短期間でこなさなければならず、"広く浅く"になりがちだ。世界中の顧客を日々相手にしながら、もっと深く、どっぷりとデータベースの世界に浸かりたいという思いが日に日に募っていく。一緒に仕事をしていた直属の上司が会社を去ったことも、松信氏がコンサルから転身を図る大きなきっかけになったという。

現在は日本オラクルから離れているものの、二度の買収のまさに渦中にいた同氏は、一連の騒動について「MySQLがSunに買われたことはタイミング的にも少し運が悪かったかもしれないと思っています。逆にOracleに買われたことでMySQLは救われたとも思っています」と、よく言われている意見とはまったく逆の見解を示している。

SunがMySQLを手に入れたその前後あたりから、Sunの財政状況は急降下の様相を呈し始めた。運悪くリーマンショックのタイミングと重なったことも、同社の財政悪化に拍車をかけた。

「売上が悪くなったことで、いろいろな行動が制限され、人材の採用も止まってしまいました。ビジネスをするのにお金がなくて動けないというのは、本当につらいことだと実感しました」

そしてOracleによる買収がMySQLビジネスの方向性を変えたという。

「Oracleはお金を稼ぐということに対して強い意志をもっている会社、儲けるすべを知っている会社です。MySQLチームにも予算が付き、Sunの時代に比べていろいろと動けるようになりました。また、スケジュール通りにプロダクトがリリースされるということも驚きでしたね(笑)」

オープンソースプロダクトは予定のリリースより(時には大幅に)遅れることが多い。だがサポートを求めるエンタープライズ企業は、定期的なアップデートを重要視する。Oracleという大企業がバックについたことで、MySQLのロードマップは目に見えやすいものになり、顧客企業からの信頼も厚くなった。

「技術的な面では、2005年の時点でOracleに買収されていたInnobase(InnoDBストレージエンジンの開発会社)の開発チームと一体になったことが非常に大きかったと思います。InnoDBの改善ペースは、目に見えて改善されました。Oracleに買収されてからリリースされたMySQL 5.6はコミュニティが予想していたものよりずっと多機能でした。そのこともOracleに対する評価を高めるきっかけになりましたね」


著者プロフィール

  • 五味明子(ゴミ アキコ)

    IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。 Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュースを日々発信中。北海道札幌市出身 / 東京都立大学経済学部卒

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