スパコンは歯を食いしばってやっている
もともと富士通は、Oracle DatabaseをOEM製品として扱うなど、Oracleとはそれなりに深いパートナーシップを結んでいた。とはいえ、SAPのソリューションを持っていたり、独自のデータベース製品であるSymfowareを持っていたりもするわけで、かつては他のOracleのパートナー企業と同様、適度な距離感を保った関係だった。
ごれが一変させたのが、OracleによるSun Microsystemsの買収だ。SPARCプロセッサの開発でかなり深い関係を築いていたSunが買収されたことで、結果的にOracleとの関係が一気に深くなる。
そのため、今回のOracle OpenWorld Tokyo 2012におけるスポンサーグレードも、唯一最高位のマーキュリーとなっている。これは、日本だからではなく、米国サンフランシスコで開催されるOpenWorldでも同様だ。
こうしてOracleと密なる関係を築いた富士通は、OpenWorld初日の基調講演の後半を務めた。
登壇したのは富士通株式会社執行役員副社長の佐相秀幸氏。
佐相氏によれば、富士通のチャレンジは"Human Centric Intelligent Society"であり、M2M(Machine to Machine)、H2M(Human to Machine)、各種センサーやスマートフォンなどから生まれるデータの利活用をサポートすること。これを実現するには、先端的な技術革新が必要だという。
その1つがスーパーコンピュータの「京」だ。
富士通にとってスーパーコンピュータで世界No1を獲得するためのプロジェクトは、お金はもちろんのこと人的リソースまで含めればかなりの投資規模になったはず。にもかかわらず、表面的に得られたものは2011年の6月、11月に2期連続で世界最速を獲得とした記録だけ。もちろん世界一はすごいことではあるが、それだけでビジネスになるわけでない。
「経営上の課題もある中やり遂げることができた。京は実験機ではなく汎用的に使えるもの。産業界でぜひこれを利活用して欲しい」(佐相氏)
とはいえ、ここまでの投資分を回収するのは、そう簡単ではないはずだ。
それでも富士通がスーパーコンピュータをやっている理由は、コンピュータという領域における先端技術でリードを確保するため。
「スーパーコンピュータが数年後の汎用サーバーに対し、大いにリバレッジ(テコの原理)が効くことになる」(佐相氏)
No1のスーパーコンピュータで利用される技術は、汎用的な一般サーバーの技術的にはおよそ6年は先を行っている。この6年のアドバンテージを得るために、富士通は歯を食いしばっているのだ。
この6年間のアドバンテージ技術が、やがてはSPARCベースの汎用サーバーにもフィードバックされることになるはず。そして、富士通でもOracleが主張しているのと同様、プロセッサ・チップの上にソフトウェアを載せることでシステムを強化していく。その際のキーワードが高並列処理、インメモリ、光インターコネクトなどが今後の技術のキーワードになるだろう。