タイトルをみて「おや?」と思われた読者は多いのではないだろうか。ビッグデータを活用しようと考えている事業者にとって、プライバシーは阻害要因として受けとめられることが多い。ビッグデータが新たなビジネス機会として認識され始めた時期は確かにそうであった。しかし、今やプライバシーは、ビッグデータビジネスを手がける事業者にとって普遍的な関心事となり、理解が深まるにつれて、正面から保護対策を講じなければ展望が開けないことが共通認識になりつつある。本連載の第1回では、なぜプライバシー保護がビッグデータビジネスを促進するものであるかについて考えていく。
個人情報、パーソナルデータ、プライバシーの関係とは
本連載では、「個人情報」、「パーソナルデータ(個人に関する情報)」、「プライバシー」の3つを、明確に区別して用いるため、最初にその定義と相互の関係を整理する。
「個人情報」は、個人情報保護法で定義されているとおり、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる、氏名、生年月日、その他の記述などにより特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」である。
「パーソナルデータ(個人に関する情報)」は、一人ひとりの個人に関連する情報の、最も広い集合を意味する用語として用いる。この中には個人情報も含まれる。ビッグデータ活用の観点からは、ウェブの検索・閲覧履歴や購買履歴、カーナビの位置情報などが主なパーソナルデータとして引用されることが多い。
「プライバシー」は、法令上の定義はないが、一般的に、個人や家庭内の私事・私生活、または個人の秘密のことを指すものと理解されている。すなわちプライバシーは、パーソナルデータのうち、一部の私事・私生活に関する情報が該当するが、「個人情報」とは1:1に対応する関係にはない(図1)。

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小林 慎太郎(コバヤシ シンタロウ)
株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 兼 未来創発センター 上級コンサルタント専門はICT公共政策・経営。官公庁や情報・通信業界における調査・コンサル ティングに従事。情報流通が活発でありながら、みんなが安心して暮らせる社会にするための仕組みを探求している。著書に『パーソナルデータの教科書~個人情報保護からプライバシー保護へとルールが変わる~』(日経BP)がある。
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