クルマが引き起こす深刻な社会問題
かつての日本をはじめ、あらゆる国で経済が成長するとクルマの台数が増えていきます。それに伴い、交通事故の増大や深刻な渋滞、ひいてはCO2排出増加が社会的な問題となります。
都市ではこれまで、社会インフラの拡大、つまり道路、トンネル、橋などを増設し交通の問題を解決してきました。渋滞情報(VICS)や自動料金収受システム(ETC)、高度道路交通システム(ITS)も整備されてきました。
しかし今日、多くの都市では用地確保の難しさや財政状況の悪化からこのアプローチを取ることが難しくなっています。例えば、大がかりな工事を行わずに渋滞を減らし、交通の流れを改善するにはどうしたらよいでしょうか。また、急速に経済発展する新興国で、時間をかけずに低コストで交通対策を施すにはどうしたらよいでしょうか。
クルマの“内と外”にあるビッグデータの活用
従来は事故の予防、渋滞解消、環境への負荷低減を目的として、人の移動を規制・制限することで対策が取られてきました。しかし本来あるべきは、移動の喜び・楽しみ、個人の嗜好にあった移動手段の選択の自由、利便性、安心・安全性が同時に叶えられ、持続可能な施策となることです。
情報通信技術を用いてこれを実現できないでしょうか。 現在のクルマには1台あたり数十種類のセンサーと50~100個の電子制御装置(そこで稼働するソフトウェアの総ステップ数はなんと数千万行)が搭載されています。
当初、これらのデータは一台のクルマの中だけでエンジンの制御等に使われていましたが、いまや通信技術の進化とコスト低下によって、ネットワークを経由してデータセンターへ送られ、複数のクルマからのデータと合わせ分析され、その結果は広く行政機関や一般市民、他のクルマと共有されるようになりました。
一方でインターネット上の地図、気象、駐車場の場所や満空情報、店舗からの広告、FacebookやTwitterなどソーシャル・メディアのデータと組み合わせることで、従来の位置情報中心のサービスに加え、新しいサービスが提供できるようになります。
例えば、渋滞予測(≠現況の表示)、カー・シェアリング、緊急事態時のルート案内などへの応用です。万一、事故にあったときでも、即座に事故場所の通知や被害状況などを救急機関や保険会社、自動車販売店などへ送り、救命率の向上や円滑な事故後処理を期待することができます。