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「いい馬に乗れたよ」―アンディが振り返る、オラクルとの30年

 10月某日、アンドリュー・メンデルソン氏がオラクル青山センターのセミナー室に登場した。彼の肩書はオラクルコーポレーション データベースサーバーテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント。社内では「アンディ」と呼ばれ親しまれている。

オラクル30年の歩み

 その日のセミナーは同氏がオラクルデータベースの30年の歩みを語るというもの。30年というのは同氏がオラクルで過ごした長さでもある。

オラクルに30年、アンディこと、アンドリュー・メンデルソン氏

オラクルに30年!おなじみ、“アンディ”こと、アンドリュー・メンデルソン氏

 セミナーの内容に言及する前に同氏のことを少し。1984年にオラクルに入社、いらいデータベース技術の開発をリードしている。オラクルの屋台骨とも言えるデータベースを技術的にほぼずっと支えてきた人物である。

 ただし生え抜きのオラクル社員ではない。実は最初に入社したのはHP(ヒューレット・パッカード)。当時のことを聞くと「HPは周知の通り、ハードウェアの会社でね…」と同氏は苦笑いしていた。ハードウェアよりソフトウェアをやりたくて転職したようだ。その後、別のITベンチャーに入社するも、長くはいなかった。IT企業のスタートアップの寿命は時に短い。そしてオラクルへ。いらいずっとオラクルとともに歩んできた。

 ここからはセミナーでメンデルソン氏が語ったOracle Databaseの歴史である。出発点は70年代。リレーショナルデータベースが登場する前なので「有史以前」のようなイメージである。メンデルソン氏は「NoSQLの時代」と冗談を言った。当然、近年のKVSに代表される「NoSQL」ではない。「SQLがない」時代だ。

 メンデルソン氏は当時の代表的なデータベース……といってもRDBMS以前なので、データベースとしての役割を果たしていたものを挙げた。

  • IMS:IBMのメインフレーム専用のデータマネジメントシステム
  • Adabas:ドイツのソフトウェアAGが開発したリレーショナル型データベース管理システム(エドガー・F・コッド氏がRDBMSを提唱する前なので現状のRDBMSの「リレーショナル」とは意味が異なる)
  • IDMS:Cullinetのデータベース管理システム
  • VSAM:IBMの仮想仮想記憶アクセス方式。Transaction Managerを付加すればトランザクション処理が可能なのでデータベース的な要素がある

 この時代はSQLが標準化されていなかったため、データへのアクセス方法がすべてベンダーや製品に依存していた。開発者の生産性は低く、OS間のポータビリティがないことも課題となっていた。

第1世代:ミニコン&メインフレーム上のデータベース

 オラクルの創業は1977年。Oracle Databaseがまだ産声を上げたばかりの70年代から80年代のOracle Databaseの差別化要因としてメンデルソン氏は「コードがポータブルなC言語で書かれていたということ」を挙げた。

 当時のOracle Databaseのライバルとしてメンデルソン氏が挙げたのが「Ingres」。Ingresといっても今スマホで人気の仮想陣取りゲームではない。UCB(カリフォルニア大学バークレー校)でエドガー・F・コッドが考案した関係モデルを実装するプロジェクトだ。

 この時代の争いはデータアクセス方法の覇権を握ることだろうか。先述したようにまだSQLが標準化されておらず、それぞれの製品が独自の方法でデータにアクセスしていた。クエリ言語の戦国時代とも言えようか。

 SQL標準化以前にはIngresの構成要素でクエリ言語「QUEL」があったものの、結果的には1986年にSQLがANSI標準となりSQLが普及した。なおOracle DatabaseはSQLが標準として定められる前、1981年からSQLと互換性を持つデータベースだったそうだ。先見性といえるのかもしれない。

第2世代:クライアント・サーバー時代のRDBMS

 80年代半ばから90年代はクライアントサーバーの時代である。いわゆる「クラサバ」。当時のOracle Database(「7」前後)の差別化要因としてメンデルソン氏が挙げるのは「行レベルロックとマルチバージョン読み取り一貫性」、「PL/SQLストアドプロシージャとトリガー」、「宣言的な参照整合性と2フェーズコミット」。この時代のOracle Databaseはトランザクション機能の強化を進めてきたといえようか。

 当時のライバルとしてメンデルソン氏が挙げたはSybase。Oracle Databaseとの違いを挙げると、ブロックレベルで読み取り/書き込みにロック、Transact SQLストアドプロシージャとトリガー、2フェーズコミットはコードで参照整合性を記述するようになっていたことなど。特に2フェーズコミットがコードレベルだったことは同氏曰く「(Oracle Databaseと比べて)複雑だった」。

 技術的な優劣は別として、当時のオラクルはSybaseという強力なライバルに押されて創業以来の成長の勢いが大きく減速した(逆にいうとそれまでが急成長すぎたのかも)。苦境に立たされたオラクルが編み出した秘策は日本市場への進出。メンデルソン氏は「そこでオラクルは日本にアレン・マイナーを送り込んだのです」と会場で目の前にいた人物に笑いかけた。

 アレン・マイナー氏とはオラクルの新卒1期生として入社し、入社5年目で日本支社を立ち上げ、日本オラクル初代代表に就任した人物。日本のITベンチャーを支える貴重な存在でもある。2001年には著書「わたし、日本に賭けてます。」を上梓した。セミナーでは最前列に座って話を聞いていた。

「当時のライバルはSybase」

「当時のライバルはSybase」

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第3世代:インターネット時代のRDBMS

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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