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ITは本当に世の中の役に立っているのか?そもそもITなんていらないのではないか?……といった本質的な問いを胸に秘めながらも、第一線で活躍する二人のIT屋が、バズワードについて、Slerの幸せについて、データベースについて、クラウドについて、エンジニアのキャリアパスについておおいに反省したりしなかったり……エンタープライズITの現場の実情が立ち上る生々しい対話です。
Webでは読めない、神林飛志さん、井上誠一郎さんによる渾身のオリジナルまえがき、あとがき付き!
ぜひご反省ください!
編集部注:対談の内容を一部、修正して再掲しています。(2016年10月24日現在)
クラウドとはAmazonのことであーる!
編集部 さて、今回のテーマはクラウドということでお願いします。
井上 神林さんはクラウド嫌いなんでしたっけ?
神林 僕ですか? 一般的には別に嫌いじゃないですよ。とはいえ、実際、好きか嫌いかっていうこと以前にですね、結局使い物になるクラウドって何を指すの? とか、海外勢と国内比べてどうなのかとか、そういう話があって、結構、定義がどうとかこうとかいう話になってしまったりして、好きとか嫌いとかそれ以前の話で。まずそもそもクラウドって何を指すのっていう。
井上 そうですね。まずはクラウドの定義から。
神林 まあ、NISTの定義とかどうでもいいんですけど、どこを指しているのかっていうのは話をはじめるにあたって、はっきりさせておいたほうがいいですね。僕だと、クラウドっていうのはもう、Amazonなんですよね。
井上 いきなり固有名詞とイコールになる……。
神林 国内もクラウドクラウドって言って実際にやってるんでしょうけど、完全に透過的に多機能を出して、安定的で、かつコストをちょっと下げてということのプラットフォーム、あるいはIaaS/PaaSは勿論、SaaSまでもってこれているっていうレベルでいうと、やっぱりAmazonが頭ひとつ抜けてます。クラウドといえばAmazonですし、Amazonといえばクラウドというのが、正直、僕の意見で。あとまあ当然Googleっていう意見もあるんですけど、あれはもうGoogle寄りの話でしかないので、クラウドって言い方していますけど、そもそも、重要なやつをちょっとかしてみたりとか……。
井上 それはでもAWSも同じですよね。根源をたどるとみんな……。
神林 はい。でも、どこまでサービサーとして自覚があるかっていう意味ではAmazonのほうがまだGoogleよりしっかりしている。Googleは割と簡単にやめそうだなと。具合が悪くなると。Amazonは1年、2年はちゃんと引っ張るとちゃんと言ってますし、そこは違うだろうなっていうのがありますね。あと最近はAzureがクラウドでは出てきているので、Azureはまだ不透明な部分はあるんですけど、AmazonとAzureくらいがクラウドと言っていいんだろうなと思います。国内については、やっぱりなかなかそういう風に言っていいものまでっていうのはなかなかできてない。
井上 固有名詞で定義されましたが、抽象的な定義はないですか?
神林 分散機能がちゃんとできていて、サービサーとして提供できるっていうのがまず基本にあります。単ノードだけのサーバーをパーンと貸すっていうのはレンタルサーバーですよね。それをクラウドとは言わないですよね。分散処理になってくると可用性が上がるのは間違いないので、高い可用性とインフラに対する透過性ですかね、トランスペアレンスがしっかりしているというところをもってクラウドかな、という風に思っているので、それで当てはまるのが2社くらいなんじゃないの?と思っているところです。
井上 すごい仮の質問なんですけど、使う側から見て、十分に分散と同じくらいに安定して、安定っていうのは、落ちないっていうこともそうだし、レスポンス性能も安定していて、裏側が集中システムだったらそれはクラウドなんですかね?
神林 そういう意味だとそうだと思いますよ。
井上 ……となると使っている技術はあんまり関係ない。
神林 使っている技術はあんまり関係ないんですけど、分散に比べて集中管理をして、ちゃんと分散処理並の高い可用性を出すことができるかっていうことについて、技術的にはできないと僕は思っているので、そういう意味では分散プラットフォームな形にもっていくしかないと思うんですよね。サーバー1台が故障する、おかしくなるっていうことは起きるので、それをどれだけ減らせるかっていうことであれば台数を増やしていくしかない。で、2台にすりゃいいかっていうと2台も壊れるよね、3台も壊れるよねってなってくるので、そこはやっぱりn台、どこまでいけるかっていう話だと思うんですよね。
井上 僕は、クラウドの定義は主に3つくらいあるかなと思っていて。1つはあんまり意味のない定義で、「ほぼインターネットと同義」みたいに、クラウドサービスだったら世界中で使えます。……というのは、クラウドのところをインターネットに置き換えてもほぼ成り立ってしまうということで、これはあまり意味のない定義かなと。2つ目は大規模というか、十分に可用性が高くて、サービスが安定しているという意味での、まあこれもインターネット上のサービスの延長かもしれないですけど、品質の高いものをクラウドと呼んでいるケース。3つ目は、さっき神林さんが言ったサービサーとしての……、というのと近いのかもしれませんけど、いわゆる所有から利用のパラダイムシフトのところを指してクラウドというのが多いのかなと。これは技術じゃないところですよ。主にそのへんがクラウドという言葉の定義かなと思います。
神林 まあ、コンピューターリソースをちゃんと提供できるっていうのがクラウドだとすれば、そういうことかもしれないですね。